p.80 抽出テキスト
加えて,三尖弁輪拡大を認めない中等度二次性TRでも左心系手術後にTRが増悪する例があるためである620-622). AHA/ACC 165)とESCガイドライン3)では,外科的介入を考慮すべき基準として三尖弁輪拡大592, 625)を挙げ,そのカットオフ値については,心エコー図心尖四腔像で計測した40 mmもしくは21 mm/m 2 としている.しかしながら,この値の妥当性を検討したランダム化比較試験は現在まで一つのみであり626),本ガイドラインでは中等症二次性TRについては三尖弁輪径という基準は採択しなかった.この理由についてはCQ4で詳しく検討しているので参照されたい. 軽症二次性TRに関するエビデンスはさらに限られている.しかし,軽症二次性TRであっても弁輪拡大を認める場合には術後にTRが増悪することがあるため592),三尖弁形成術を考慮しても良い(推奨クラスIIb).その弁輪径拡大の基準については,明確なエビデンスがないため,本ガイドラインではAHA/ACC 165)とESC 3)のガイドラインに従って>40 mmもしくは>21 mm/m 2とする.また,近年,心房細動の持続が左心系弁手術後遠隔期におけるTR増悪と関連することが報告されている571, 573, 619).このため,心房細動が持続する例では,軽症TRに対して同時の三尖弁形成術を検討してもよい(推奨クラスIIb).なお,軽症または中等症二次性TRに関する三尖弁置換術のベネフィットは証明されておらず,本ガイドラインでは推奨しない. 5.2.3 単独二次性TR(表39,図20) 二次性TRは内科治療で重症度が改善することが多い.このため,二次性TRではまず内科治療を試みるべきである.しかし,いったん内科治療で改善しても,再び重症化して右心不全を繰り返すことが多いのも二次性TRの特徴である.こうした二次性TRでは,適切な手術時期を逃 表39 単独二次性TR に対する手術適応の推奨とエビデン スレベル 推奨クラスエビデンス レベル 心臓手術後の単独二次性TR内科治療にもかかわらず右心不全を繰り返し,高度な右心機能低下,不可逆性の高度肺高血圧または肝機能障害をきたしていない重症TR に対する三尖弁形成術(または置換術) IIa C心房細動に伴う単独二次性TR内科治療にもかかわらず右心不全を繰り返す重症TR に対する三尖弁形成術(または置換術) IIa C無症状だが,内科治療にもかかわらず,進行性の右心機能低下,右室拡大を認める重症TR に対する三尖弁形成術IIb C ありなし 高度右心機能低下または不可逆性の高度肺高血圧や肝機能障害** 推奨クラスIIb 三尖弁形成術三尖弁形成術(三尖弁置換術) 推奨クラスIIa 内科治療 継続三尖弁形成術(三尖弁置換術) 推奨クラスIIa 内科治療 継続 重症二次性TR* (心臓手術後) 内科治療 ありなし 進行性の右心機能低下 または右室拡大 重症二次性TR* (心房細動による) 内科治療 あり あり なし なし 右心不全を繰り返す右心不全を 繰り返す 図20 単独二次性TR に対する手術適応* TR重症度評価は心不全増悪時** 再手術はリスクが高いため,右心機能低下や肺高血圧,肝機能を考慮する