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p.78 抽出テキスト

れず議論の余地を残している604).今後は生体弁であれば将来的にvalve-in-valveの可能性があることを視野に入れた人工弁選択が必要となる.

5.1.4 TRに対する経カテーテル治療

TRに対する治療における低侵襲治療には大きな関心が寄せられており,左心系手術後のTRに対する外科治療のような大きなリスクを伴う症例では経カテーテル治療が期待されている.欧米ではすでに,MitraClip ®の三尖弁への使用,数種類の経カテーテルによる新規デバイスの三尖弁形成の臨床使用も開始され,それらの良好な早期臨床成績についても報告されてきており605),今後のさらなる発展が期待される.

5.2 外科治療の適応の時期

TR症例は年々増加しており,それに合わせて外科治療を必要とする症例も増えている566).しかしながら,TRに対する外科治療の適応と至適時期については常に議論の対象になっており,十分なコンセンサスが得られていない部分も多い.その主な理由は,TRの原因が多岐にわたりさまざまな臨床因子がその病態や予後に関係していることと,TRに対する外科治療は有効だが606),その適応に関しては臨床エビデンスが不足していることである.一方で,重症TRへの手術介入の遅れは,不可逆性の右心機能低下607)に加え,右心不全による肝機能障害や腎機能障害,カヘキシアなど全身状態の悪化を招き583),予後不良となる608).最近,孤立性TRの外科治療が内科治療と比べて予後を改善しないという後ろ向き観察研究が発表されたが,この研究ではさまざまな病態のTRが含まれているうえ,手術時の右心機能や右室サイズ,症状などの情報がなく,手術タイミングが適切であったかについても疑問が残るため,TRに対する外科治療の有効性を否定するものではない609).ここでは,限られた臨床的エビデンスに加えて,多くの専門家の意見ならびにAHA/ ACCガイドライン165),ESCガイドライン3) を考慮した上で,TRの外科治療の適応時期について述べる.

5.2.1 一次性TR(表37,図18)

ここでは,三尖弁逸脱,IE,エプスタイン奇形,外傷性など弁に器質的変性を認める一次性TRに関する手術適応について述べ,心房細動に伴う機能性TRについては別項で扱う.

僧帽弁手術をはじめとする左心系弁手術の遠隔期にTRが増悪し,予後不良因子となることが知られている573, 610-612).また,左心系弁手術後遠隔期におけるTRへの外科的介入

は,手術リスクが高いことが知られている613).このため,左心系弁手術を行う際に重症一次性TRを認める症例では,

表37 一次性TR に対する手術適応の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

無症状だが,左心系弁手術を行う重症TR に対する三尖弁形成術(不可能な場合は置換術) I B内科治療にもかかわらず,右心不全症状を繰り返す(または明らかに内科治療抵抗性と予想される)重症TR に対する三尖弁形成術(不可能な場合は置換術)* I C内科治療下では無症状であるが,進行性の右心機能低下,右室拡大を認める重症TR に対する三尖弁形成術(不可能な場合は置換術) IIa C左心系弁手術を行う中等症TR に対する三尖弁形成術IIa C * 既に高度な右室機能低下をきたしている例は除く

三尖弁形成術(三尖弁置換術)推奨クラスIIa三尖弁形成術(三尖弁置換術)

推奨クラスI

内科治療

継続重症一次性TR*

左心系弁手術が必要

内科治療**

いいえ

いいえ

なしはい***

ありはい

左心系弁手術施行時

明らかな右心不全症状を繰り返す

進行性の右心機能低下

または拡大

図18 重症一次性TR の手術適応* 外傷性,エプスタイン奇形,IE,三尖弁逸脱などを含み,心房細動に伴う機能性TRは含めない. ** 明らかに内科治療は困難と思われる場合は,内科治療を行うことなく外科治療の適応を検討する. *** 高度な右心機能低下を生じていない場合.