p.75 抽出テキスト
ドライン35)ならびに右心評価ガイドライン45)に従う. 最初に行うべきことは,三尖弁の器質的異常の有無に注意して,一次性なのか二次性なのか判断することである.多方向から三尖弁を観察して,エプスタイン奇形など弁の器質的変化,弁輪拡大の有無,弁のテザリングの有無などを注意深く評価する. TRの重症度評価法としては,カラードプラ法による逆流ジェットの面積をみる方法が広く使われている.しかしながら,TRの逆流弁口は複雑な形態を呈し,かつ複数存在することが多いため逆流ジェット面積の使用には限界がある.さらに,TRが重症化して右房圧が上昇すると右室-右房圧較差が小さくなって逆流ジェット面積の広がりは小さくなってしまう.このため,TRジェットの縮流部幅を計測する方法が,半定量的方法としてよく用いられる.さらに連続波ドプラを用いる方法やPISA 法などの定量的方法もTR重症度評価法として知られている.しかし,いずれの指標も限界があるため(表36),特に中等症以上のTRが疑われる例では,複数の指標を組み合わせて包括的に重症度評価を行う必要がある(表34) 33). TRの治療方針を決める上で,右室拡大ならびに収縮能の評価は必須である.心エコー図検査による右室の収縮能や容積の定量評価が難しい主な理由は,右室が複雑な形態をしているためである.右室収縮能の一般的な評価法として知られているのは,右室面積変化率(FAC)とTAPSE,右室自由壁組織ドプラ波形における収縮期波s’波である45).このうちTAPSEと右室自由壁組織ドプラs’波は,右室では長軸方向の運動が心拍出量と相関するこ 表36 心エコー図検査による主なTR 評価項目の利点と注意点 心エコーパラメータ利点注意点カラードプラ法 吸い込み血流・ 迅速な定性的評価・ 複数のジェットが存在する際は評価が難しい・ 半球とならない 縮流部幅・ 逆流弁口径の代替・ 通過血流速度および駆動圧に影響されない・ 技術的な要素に影響されない・ 重症のTR を特定するのに良い・ 複数のジェットが存在する際は評価が難しい・ 測定の際に,縮流部位をきれいに描出する必要あり ジェット面積・ 定性的・ 駆動圧とジェットの方向に依存する・ ジェットの方向および形状は,ジェット面積を過大評 価または過小評価する可能性がある パルスドプラ法 肝静脈血流の反転・ 単純で補助的な重症TR の徴候・ TTEおよびTEEの両方で計測可能・ 右房のコンプライアンスに依存する・ 心房細動,逆行性心房伝導を伴うペーシングリズムの 患者では信頼性がない 連続波ドプラ法 逆流ジェットの濃度・ 簡便・ 淡い,または不完全なジェットは軽症TR と判断できる・ 定性的・ 完全なセントラルジェットの場合,重症度の高い偏在 性ジェットよりも濃く見えることがある・ 中等症TR と重症TR の鑑別が困難 逆流ジェットの輪郭・ 簡便・ 低速で早期にピークを有する密度が高いTR ジェット は,右房圧と右室圧が均等化することを示し,重症TRに特徴的・ 定性的・ 右室圧と右房圧の変化による影響を受ける 定量的方法 PISA法・ EROAや逆流量,逆流分画などを定量的に評価できる・ 複数のジェットの場合は使用できない・偏在性ジェットでは不正確・ エビデンスが乏しい・ PISAの輪郭がより平坦化して過小評価してしまう(Zoghbi WA, et al. 2017 33)を参考に作表)