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p.73 抽出テキスト

三尖弁尖の接合不全が生じる機序として,肺高血圧を伴うTRではテザリングが強く,心房細動によるTRなど肺高血圧を伴わないTRではテザリングよりも弁輪拡大が主体であるが564, 565),長期に経過し右室機能低下が進行するとテザリングが生じる.これら弁の形態や右室機能は574, 575),手術適応,術式,予後に大きく関わるため,個々の症例で評価する必要がある.

2 病態と自然歴

2.1 血行動態と病態

TRにより,右房,右室に容量負荷がかかり,静脈圧が上昇,心拍出量は低下する.TRによる容量負荷により右室・三尖弁輪が拡大し,そのためにさらにTRが増悪するという悪循環に陥る.原疾患による右室に対する圧負荷/容量負荷や,長期に経過した重症TRによる容量負荷により,右室機能低下をきたす.右室拡大,右室機能低下による右室拡張期圧の上昇から,心室中隔が左室側に偏位し,左室右室相互作用により左室拡張不全が生じることもある.

2.2 自然歴

重症TRであっても,長期にわたって症状に乏しく,低圧系のため心雑音も聴取することが少ないので,心エコー図検査で偶然発見されることも多い.

重症TRによる静脈圧上昇のため全身臓器のうっ血をきたし,下腿浮腫,胸水貯留による呼吸困難,食思不振,腹部膨満感などの症状を引き起こす.全身臓器のうっ血・低心拍出状態が長期に及ぶと,多臓器不全を引き起こす.うっ血肝が進行して肝硬変になると汎血球減少や胆道系酵素の上昇,低アルブミン血症などを生じ,予後不良となる563).

しかし,右心不全症状が主体であるため自覚症状に乏しく,また右室機能評価も左室機能に比して定まっていない.大動脈弁疾患や僧帽弁疾患に比してTRの自然歴に関するデータはきわめて少ない.そのため,手術時期の決定にはいまだ問題点が多いのが現状である. 3 重症度分類

重症度評価は主に心エコー指標により決定される.しかし,TRの重症度評価には以下にあげるいくつかの問題点がある33, 34, 576).心不全治療など容量/圧負荷の状態により,TRの重症度が大きく変化するが,どの時点での重症度をもって手術適応を決定するのか定まっていない.複数の逆流ジェットの症例が多く,逆流弁口も円形ではない.心房細動例が多く,呼吸性変動も大きいため,TRの定量評価は難しい.右心系の形態がいびつであるため,右室容積・右房容積の定量評価も2Dエコーでは難しい.右室容積の評価には,心臓MRIでより正確な評価が可能である.

重症度指標を表34に示す33, 34).複数の指標で総合的に評価して重症度を決定する.

4 診断

TRの治療方針決定には,症状や身体所見の確認のほか,画像診断が重要になる(表35).画像診断としては, TTEが中心となるが,必要に応じてTEEや運動負荷心エコー図検査,心臓MRIを用いる577).

4.1 症状と身体所見

右心不全は,肺うっ血を生じる左心不全にくらべて自覚症状が乏しいことが多い.そのため,重症TRであっても,明らかな自覚症状を有しないことがある.しかしTRの増悪あるいは右心機能の低下により右心不全が増悪すると,次第に自覚症状が出現するようになる.TRによる自覚症状は主に2つの機序に分けられる.1つは右室前方への心拍出量の減少による息切れや易疲労感,倦怠感である.もう1 つは右室後方の静脈うっ血による全身の浮腫と食思不振,臓器うっ血随伴症状,腹水などである.臓器うっ血は全身のさまざまな臓器に影響し,肝うっ血による肝腫大や肝機能低下,腎うっ血による心腎症候群,消化管のうっ血による消化不良,脾機能亢進による汎血球減少などを引き起こす.こうした右心不全が進行すると最終的には心臓性悪液質(cardiac cachexia)に至る.

身体所見としては,頸静脈の怒張や前胸部における全