p.71 抽出テキスト
れれば,同時AVRが妥当である(推奨クラスIIa). 552, 553). 6 内科治療とフォローアップ 脂質低下療法がASの進行を抑制するのではないかとういう仮説の下に,ランダム化比較試験が行われたが, ASの進行を抑制する効果は認められなかった464, 465).ASに対する直接的な内科治療はないが,高血圧を合併する場合はその治療が重要である.上記のランダム化比較試験の1つにおいて,高血圧のAS患者は正常血圧のAS患者と比較して,経過観察中の虚血性心血管イベント発生率は56%も高く,死亡率は2倍にも達すると報告されている554).手術適応がなく経過観察中のAS患者においては,症状出現の有無やASの重症度のみならず,血圧コントロールにも十分注意が払われるべきである.しかし,過度な血圧低下を招かないように,降圧薬は低用量から開始し,漸増する必要がある. ASの至適フォローアップ間隔に関するエビデンスはないが,欧米のガイドラインに準じ3, 233),年齢や併存疾患など患者固有の要素も考慮した上で,通常は重症ASであれば6ヵ月から1年毎,中等症ASであれば1年から2年毎,軽症ASであれば3年から5年毎のフォローアップを推奨する.問診により症状出現の有無を確認し,必要に応じて運動負荷検査を行う.心エコー図では,AS進行の程度,左室収縮能,AS以外の弁膜症などを評価し,可能な限りBNPを測定することが望ましい. CQ 3 LVEF の保たれた無症候性超重症AS に早期手術は必要か? 大動脈弁最大血流速度(Vmax)≧5.0 m/ 秒,mPG≧ 60 mmHg,AVA<0.6 cm2 の超重症 AS には,無症状であっても手術リスクが低い場合には手術を推奨する. 推奨の強さ 2:弱く推奨する(提案する)エビデンス総体の強さB(中) 現行の欧米のガイドラインでは, AVA<1.0 cm 2, Vmax≧4.0 m/秒, mPG≧40 mmHgで規定される重症ASでは,症状があるか,またはLVEFが低下しているときに手術適応を考慮することを推奨している.言い換えると,LVEFが保たれていて無症状であれば重症ASというだけでは手術適応とはならない.これ は重症ASであっても突然死発生率は年間1%程度であり,注意深く観察されていれば無症状の期間の生存率は健常人と同様とされているからである555). では,無症状であっても,より重症のAS(超重症AS)の場合はどうであろうか.RosenhekらはVmaxが5.0 m/秒以上の無症候性ASの連続患者116人をVmax 5.5 m/秒未満と5.5 m/秒以上の2群に分けて前向きに検討したところ,5.5 m/秒以上群で有意に予後不良であったと報告している.さらに6ヵ月ごとに経過を観察されていたにもかかわらず6人が心臓死(突然死1人,心不全4人,心筋梗塞1人)をきたしたという470).このことは超重症ASでは無症候であっても心臓死をきたすことがあるということを示す.KangらはLVEFの保たれた無症候性超重症AS患者(AVA≦0.75 cm 2,かつVmax≧4.5 m/秒またはmPG≧50 mmHg)連続197人を,早期手術群と従来治療群に分けて検討し,早期手術群が予後良好であること,そして従来治療群において心臓死に関連する独立した因子は,Vmax 5.0 m/秒以上であることを示した472).mPGで群別した研究では,LVEFが保たれており無症状ないし極軽度の症状にとどまるAS 559人において,mPGが60 mmHg以上の群が未満の群にくらべて4年生存率が有意に低値であった545).AVAについては,無症状であってもAVAが小さくなるほど4年間の心事故回避率が低下し(AVAが0.8~1.0 cm 2 で34%,0.6~0.8 cm 2 で26%, 0.6 cm 2以下で11%),特に0.6 cm 2以下では0.6 cm 2超にくらべて有意に死亡率が高いと報告されている546).わが国からの報告もいくつかある.166人の重症 AS (Vmax ≧4.0 m/ 秒,mPG ≧40 mm Hg,AVA <1.0 cm 2)と58人の超重症 AS(Vmax ≧5.0 m/秒,mPG ≧50 mmHg,AVA <0.6 cm 2)の予後を比較した単一施設での後ろ向き検討では,症状のある超重症ASの予後が最も悪く,無症候性の超重症 ASと症候性の重症 AS患者の予後が同等で,無症候性重症 AS患者の予後は他群と比較すると良好であった543).このことはわが国においても,無症候性の超重症ASであれば早期手術を考慮した方がいいことを示唆する.またわが国の多施設共同研究であるCURRENT AS レジストリーでは,1,808人の無症候性重症ASのうち,診断後早期に手術を実施した291人と保存的に経過を観察した1,517人とを比較し,早期手術群の方が予後が良好であったと示しているが,この結果には,早期手術群のうち114人が超重症 AS(Vmax≧5.0 m/秒)であったことも関係しているかもしれない473).このように超