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p.70 抽出テキスト

またSAVR,TAVI両方において手技は年々安全になっているが,特に超高齢者においては予後改善効果が小さく,ADLの改善も限定的である.また寝たきりや認知症患者に対する侵襲的手技は予後も悪く532, 533),これらの症例に対する安易な介入は厳に慎むべきである.したがって,倫理的かつ医療経済的観点も十分に考慮して,弁膜症チームで慎重に協議したうえで適応を決定する.

重症ASに対する手術適応があり,上行大動脈の拡大を認める場合は,三尖弁では上行大動脈径≧50 mm,二尖弁では上行大動脈径≧45 mmであれば,同時手術を考慮することは妥当と考えられる.詳細についてはARの項を参照されたい.

5.3.2 無症候性重症ASに対する適応

無症候性重症ASに対して早期に手術介入を行うべきか否かは,古くから論争の的であるが,依然として明確な結論は出ていない.無症候性重症ASの患者に早期手術を推奨するためには,突然死や不可逆的左室心筋障害の回避など,早期手術により得られる利益が,手術リスクや人工弁に関連する合併症など,早期手術により被る不利益を上回らなければならない.これまでの観察研究には,保存的治療を受けた患者では予後不良であるため28, 534),早期手術を支持するというものがいくつかある472, 473, 535, 536).ランダム化比較試験には,注意深い経過観察(watchful waiting)と早期AVRを比較したAVATAR試験537)やRECOVERY試験などが現在進行中である.また,無症候性重症AS患者に対するwatchful waitingと早期TAVIを比較したランダム化比較試験も進行中(EARLY TAVR試験),または計画中である(EVE-TAVI試験) 538).これらの試験の結果が出るまでは,個々の患者の状態をふまえて,弁膜症チームで十分に議論し,治療方針を決定することが望ましい.

しかし,ある特定の患者群においては早期手術が推奨される.LVEFが低下した(<50%)患者や534-536),運動負荷検査で症状が出現した患者においては49, 50, 539),保存的に管理された場合,それらの所見を認めない患者と比較して明らかに予後不良であるため,早期手術が推奨される(推奨クラスI).LVEFに関しては,50%未満が予後不良とされているが,最近では60%未満でも予後が不良とする報告もでてきている455, 471, 540-542).運動負荷検査で血圧低下を認めた症例に対しても,早期手術が妥当である49, 50)(推奨クラスIIa).また,無症候性重症ASのなかでも,大動脈弁最大血流速度がより増大している患者(超重症AS)においては,保存的に管理されれば予後不良である470, 472, 543).大動脈弁最大血流速度が5.0m/秒以上の患者を保存的に経過観察した場合,5.0 m/秒未満の患者と

比較して明らかに予後不良と報告されており,大動脈弁最大血流速度が5.0m/秒以上の患者においては早期手術が妥当である472, 543)(推奨クラスIIa)(CQ3参照).大動脈弁最大血流速度の急速な増大も予後規定因子の一つであるとされており24, 469, 544),年0.3 m/秒以上の急速な進行を認める場合は早期手術を考慮してもよい(推奨クラスIIb).大動脈弁最大血流速度以外の指標に関しては, mPGが60 mmHg以上の患者や545),AVAが0.6 cm 2以下の患者においても546),保存的に管理されれば予後不良であるため,早期手術が妥当である(推奨クラスIIa).また, ASが原因の著明な肺高血圧(収縮期肺動脈圧60 mmHg以上)を認める場合には,早期手術が妥当である38, 547)(推奨クラスIIa).

バイオマーカーであるBNPは,無症候性重症ASにおける症状出現や心血管イベントを予測しうる11, 548-550). BNPは簡便で安価な検査であり,外来で繰り返し行えるため,フォローアップにも適している.その値の経時的変化も予後予測に有用であると報告されている551).したがって,BNP上昇例においては早期手術を考慮してもよいが,用いられているカットオフ値は報告によりさまざまであり,現時点では十分なコンセンサスが得られているとは言いがたいため,手術適応の基準となる具体的なBNP値を明示することは難しい.

手術を決定する際は,ASの重症度に加えて,手術リスクの評価が重要である.特に適応の推奨度がクラスIIの場合,手術のリスクが低い症例(STS スコア, EuroSCORE,Japan SCOREやカテーテル治療の手技リスクを用いて決定する)では手術を考慮してよいが,リスクが高い患者では慎重に検討し,経過観察を継続するという選択肢も考慮されるべきである.

手術介入が必要と判断された症例に対してSAVRかTAVIのどちらを選択すべきかは,前項の有症候性ASの項で述べられている判断基準に準じて決定する必要がある.ACC/AHA,ESCのガイドラインでは,有症候性ASのみをTAVIの適応としているが,高齢であるがゆえに症状の判断が難しく,また有症状の定義が不明確であり,本ガイドラインではTAVIの現状も鑑み,無症候性ASの治療適応決定の際にもTAVIを含め,弁膜症チームによる術式決定を必要とした.

CABG,上行大動脈手術,あるいは他の弁膜症の手術を受ける無症候性重症AS患者においては同時AVRが推奨される(推奨クラスI).また,これまでの報告からは,中等症AS患者においても,70歳未満であるか,もしくは70歳以上であっても同時手術のリスクが高くないと予想さ