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p.67 抽出テキスト

主な危険予測因子であった506).ただし,この論文の時代にはTAVIが認可されておらず,高リスクな症例も含まれていることに留意する必要がある.2018年にわが国のOsaka Cardiovascular Surgery Research group(OSCAR)より報告された高齢者に対する大動脈弁単弁置換の術後5年生存率は,CABG併施症例を含めて46.9%,心臓関連死回避率は56.7% であった507).

ASに対する機械弁置換術では,EOAの大きいモデルの開発により,多くの狭小弁輪症例で弁輪拡大術を行わずにSAVRを行うことが可能となった.わが国における二葉機械弁を用いたSAVR後の長期成績は,人工弁関連死回避率が10年90~95%,20年85~90%,再手術回避率10年98%,20年95% と報告されており,米国における成績とほぼ同等であった359, 508).適切な抗凝固療法下における二葉機械弁植込み後20年の血栓塞栓症回避率は,わが国で78.5~95%,米国で82%,出血イベント回避率はそれぞれ80~95%,76%であった359, 508).一方,生体弁を用いたSAVRのSVD回避率は手術時の年齢によって異なり,若年であるほどリスクが高い.近年の報告では,ウシ心膜弁を用いたSAVRにおいて,手術時の年齢が60歳未満の症例のSVD回避率は,術後15年で66~70%, 20年で30~37%,60~69歳では15年で70~77%,20年で40~53%,70歳以上では15年で91~100%,20年で70%であった408, 509).

もう一つの生体弁であるブタ大動脈弁の耐久性は,ウシ心膜弁と同等か510-512),やや劣ると報告されている513, 514).

5.2 カテーテル治療の現状と成績

SAVR が不可能もしくは高リスクな患者に対し,従来はバルーン大動脈弁形成術が行われてきたが515),一時的な症状の改善は認めるものの予後を改善しないことが知られていた.TAVIはそのような患者群に対し根治が可能な低侵襲カテーテル治療として2002年にフランスで第一例が施行され516),以降世界中に普及している.

弁の種類は大別してバルーン拡張型と自己拡張型があり,それぞれ初代のデバイスから改良が重ねられている.デバイス径も14–16Fと低プロファイル化され,また弁周囲逆流を防止する機構が備わっているデバイスもある.

留置経路としては最も低侵襲な経大腿アプローチが第一選択であり,多くの症例で使用されているが,血管アクセスに問題がある場合は経心尖,経鎖骨下,経大動脈アプローチなどが使用される.

当初TAVIの適応は外科手術が不可能な患者,もしくは高リスク患者が対象であったが,中等度の外科周術期リスクに対するTAVIとSAVRのランダム化比較試験

(RCT)が複数発表された.経大腿アプローチを使用したTAVIはSAVRにくらべ死亡,脳梗塞ともに有意に低かった517, 518).またTAVIのSAVRに対する非劣性が示された519).これらの複数のRCTの結果に基づき,中等度リスク患者に対するTAVIはAHA/ACCガイドラインにおいて推奨クラスIIa 234),ESC/EACTSガイドラインにおいて推奨クラスIの適応となっている3).

低リスク患者に対するRCTも複数存在し,最近PARTNER 3試験520)とEvolut low risk試験521)が発表された.術後1~2年の予後に関して,TAVIはSAVRに対して優位520)または非劣性であることが証明された521).また,これらの試験に共通し,30日時点での死亡,脳梗塞の複合エンドポイントはSAVRにくらべTAVIの方が有意に低いことが示された.その他,NOTION試験ではすで5年成績が出ており,低リスク患者に対するTAVIのSAVRに対する非劣性が示されている522).つまり低リスク患者に対し, TAVIはSAVRにくらべ,長期予後のデータはないが,中期成績においては同等かより良好,短期成績ではより良好であることが複数のRCTによって示されている.以上のデータより,2019年,低リスク患者に対するTAVIについて,米国では米国食品医薬品局,欧州ではCEマークの承認を受けている.

わが国でも2013年より保険適用となり,30日死亡率は2%以下と,海外とくらべ良好な成績を挙げている523, 524).

今後の課題としてはまず弁の血栓症と抗血栓療法が挙げられる.2015年に初めて無症候性の血栓弁が造影CTによりTAVI弁,SAVR弁ともに報告された71).この現象はSAVR弁にくらべTAVI弁に多くみられ,一過性脳虚血発作との関連が示唆され,また抗凝固療法がリスクを低下させることが示唆されたが72),TAVI適応患者は高齢である場合が多く,出血性合併症のリスクを鑑み抗凝固療法については適応を慎重に検討すべきである.わが国でも同様の現象が報告されており73),今後の検討が必要である.

次に生体弁の耐久性について,SAVR弁は10年以上の良好な耐久性を示している408).近年,TAVI弁の耐久性についてもいくつか報告があり525-527),10年以下の耐久性はSAVR弁と遜色ない結果を示しているが,10年以上のデータについてはいまだ乏しい.いくつかのSVDの定義が提唱されており528, 529),今後統一した定義による評価が必要である.この耐久性の問題から,現時点では若年者にまでTAVIの適応を拡げるべきではない.

また,自己拡張型弁によるTAVIはSAVRよりも伝導障害をきたしやすく,ペースメーカー留置率が高い.適応を決める際に考慮するべき点である521).