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p.64 抽出テキスト

か,それとも中等症ASだが,一回拍出量が低下した状態では弁口が十分に開かないという偽性重症ASに基づくものかの鑑別を行う際に用いられる(推奨クラスIIa).詳細は4.4 低流量低圧較差AS(low flow,low gradient AS)で述べる.

4.3 心臓カテーテル検査・ CT・MRI

心臓カテーテル検査はAS治療における術前診断において重要である.ASに併存する冠動脈疾患は治療方針を決定する上でも十分な評価が必要であり,冠動脈造影は標準的に行われている診断法である480).冠動脈造影で狭窄が認められたAS患者において,心筋虚血の有無を評価することは重要であるが,左室肥大を伴うため解釈に注意が必要である481).冠血流予備比の測定は,使用薬剤による血圧低下の懸念から,AS患者においては使用しにくい場合があり,近年,薬剤を使用しない方法の有用性も報告されている482).また,高齢者や冠動脈造影のリスクが高い場合は,冠動脈CT検査のほうがより安全に施行でき,陰性適中率も高いため69),冠動脈CTで有意な病変が指摘されず胸部症状もなければ,かならずしも術前に冠動脈造影を施行する必要はない.

近年,低流量低圧較差重症ASの概念も提唱されており, AS治療適応決定において正確な重症度評価が重要である.心エコー図検査で重症度の判別がつきにくい場合は,右心カテーテルによる血行動態評価と大動脈左室同時圧測定が有用である場合がある(推奨クラスIIa).心臓CTによる石灰化スコアも重症度判断には有用である65, 483).

心電図同期下の心臓CTは,正確な弁形態評価(特に二尖弁など)に有用である(推奨クラスIIa) 70).また大動脈弁複合体の評価はTAVIの手技リスク評価や生体弁の種類,サイズ選択,留置経路決定に重要である(推奨クラスIIa) 66-68).

心臓MRIは心筋の線維化の検知と定量に有用である可能性がある400).CTは術後SAVR,TAVI後の弁血栓症の検知や血管合併症の検知に有用である71-73, 484).

ASに対する各検査の推奨度を表31に示す.

4.4 低流量低圧較差AS(low flow,low gradient AS)

ASの重症度評価は一般にAVA(<1.0 cm 2)とmPG(≧ 40 mmHg),大動脈弁最大血流速度(≧4.0 m/秒)で行われている(表30).この3つの基準が合致すれば正しい評価である可能性が高いと言えるが,しばしば合致しない485).これには計測誤差の可能性以外に,弁通過血流速

度や圧較差の血行動態依存性がある.そのため,重症ASでも一回拍出量が低下している場合には圧較差は増大しない.このような病態を低流量低圧較差AS(low flow, low gradient AS)という.低流量を示す病態として,後負荷不整合や心筋障害,合併心疾患のためにLVEFが50%未満に低下している場合と,LVEFは50%以上に保たれているが,心室が小さいために一回拍出量が低下している場合(paradoxical AS)がある.

4.4.1 LVEF低下例(<50%)

低心機能のため一回拍出量が低下し,AVAが1.0 cm

2 未満と算出された場合,これが真の重症ASなのか,中等

症ASであるにもかかわらず一回拍出量が低下しているために弁口が十分に開かないことにより,AVAが小さく算出される偽性重症ASなのかの鑑別には,ドブタミン負荷心エコー図検査を用いる486).ドブタミン負荷(最大投与

表31 AS に対する検査の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

AS が疑われる症例の,AS の重症度・病因,左室サイズ/ 機能などを評価するためのTTE I B中等症AS におけるAS 進行の評価や,無症候性重症AS における手術時期を決定するための定期的なTTE I B TAVI を考慮している症例における大動脈弁,大動脈基部の評価のための心臓CT I C LVEF の低下した低流量低圧較差重症ASに対する偽性重症AS と真の重症AS の鑑別や収縮予備能評価のための低用量ドブタミン負荷心エコー図検査IIa B無症候性重症AS における症状の有無を確認するための運動負荷検査IIa C無症候性重症AS または有症候性中等症AS における,負荷時の症状・血行動態把握のための運動負荷心エコー図検査IIa C心エコー図検査での評価が困難な症例や,臨床症状と心エコー図所見に乖離があるような症例における,心臓カテーテル検査による重症度・血行動態評価IIa C TTE が画像不良で評価が不十分な場合の大動脈弁・大動脈基部の評価のためのTEE IIa C LVEF の保たれた低流量低圧較差重症ASにおける,大動脈石灰化評価のための心臓CT IIa C