p.60 抽出テキスト
7 内科治療とフォローアップ 7.1 内科治療 7.1.1 非手術適応慢性重症または中等症AR 慢性AR患者における内科治療において重要なことは,血圧コントロール(収縮期血圧 <140 mmHg)である.血管拡張作用をもつ内服薬(ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬, ACE阻害薬/ARB)を用いて,収縮期血圧を下げることが有効である.一方,β 遮断薬に関しては,心拍数低下作用により一回心拍出量が増加し,逆に収縮期血圧を上昇させるおそれがあるため,非手術適応段階での有効性は低い443, 444).また,心拍数低下作用により,拡張期時間が延長することにより,ARが増悪し,心不全を引き起こす可能性がある.中等症ARに対して,内科治療による予後改善に関するデータはない. 7.1.2 手術適応慢性重症AR 症状出現や左室機能不全を認めるも,併存疾患や患者背景のため手術が施行できない場合は,ACE阻害薬/ ARB投与が推奨される445).これは,症状緩和だけでなく,投与により左室機能改善が見込まれ手術施行可能となる症例もあるためである.β遮断薬に関しては,容量・圧負荷に伴う左室機能不全に対して有益であるという報告もあり446, 447),投与を考慮してもよいが,上述のごとく心拍数低下による負の面があるため十分注意を要する.投与する場合でも,徐脈作用の弱いものを選択する方がよい. 7.1.3 マルファン症候群・上行大動脈拡大を伴う二尖弁 +慢性AR マルファン症候群における上行大動脈拡大において, β遮断薬とARBの使用が推奨される.両者で拡大抑制に関する効果に差は認めなかった448).エビデンスはないが,上行大動脈拡大を伴う二尖弁例における拡大抑制に関しては,マルファン症候群と同様にβ遮断薬またはARBを使用することが妥当と考えられる. 7.2 フォローアップ 重症ARかつ左室機能が正常である場合,6ヵ月から1年に1回のTTEでのフォローアップが望ましい.血圧コントロールが必要である場合は,3ヵ月ごとに内服コントロールを行う.一方,初回診断時や左室拡大・LVEF低下が進行している場合は,3~6ヵ月間隔でTTEをフォローアップすることが望ましい.逆流が中等症の場合は1~2年,軽症の場合は3~5年間隔でTTEによるフォローアップを行う.二尖弁ではARが有意でない場合でも,今後有意なAR/AS/上行大動脈拡大を認める可能性が高いため,1~2年間隔でTTEを施行することが望ましい. 40 mm以上の上行大動脈拡大を伴う場合は,単純CTでよいので,上行大動脈径のフォローアップを行うことが望ましい.TTEでは,上行大動脈において描出不能部位があるため,特に進行例や拡大の程度が強い症例ではCTによる評価が望ましい.