p.57 抽出テキスト
左室拡大の因子として関わっているためである.LVESDに関しては,欧米では術後予後を考慮するとLVESD 50 mmが妥当なカットオフ値であるという報告が多いが428-430),わが国のデータでは50 mm未満をカットオフとする報告があり425, 431),欧米人との体格差を考慮しLVESD>45 mmを推奨クラスIIaでの手術適応とすることが妥当と考えられる.一方,欧米のガイドラインで使用されているBSA補正をかけたLVESDに関しては,わが国のARに関するデータにおけるBSAはおおむね1.6 m 2であり425, 431),LVESDのカットオフ値45 mmにあてはめると,LVESD index 28 mm/m 2 に相当し,欧米のガイドラインで使用されているLVESD index 25 mm/m 2 とは相違がみられる.わが国の報告としては,Saishoらが,術後の左室機能を考慮したLVESD indexのカットオフ値を算出し,LVESD index 26.7 mm/m 2 を術後の左室収縮不全出現におけるカットオフ値としている431).しかし, CQ 2 で取り上げているように,LVESD index 25 mm/m 2 に関する複数の報告を考慮し 30, 432-434),わが国における LVESD index>25 mm/m 2は,より細やかなフォローアップを必要とする警告基準とし,手術適応に関しては推奨クラスIIaではなく,推奨クラスIIbとした. LVEDDに関しては,根拠となるデータが少なく,わが国のデータでも術後の予後との関連は認めないという報告がある425).よって,過去の欧米のデータと日本人との体格差を考慮し,LVEDD>65 mmを推奨クラスIIbでの手術適応とした425, 430, 435). d. 上行大動脈置換術・CABG・僧帽弁手術など他の開 心術が適応上行大動脈置換術・CABG・僧帽弁手術など他の開心術が適応となる場合,周術期のARによる血行動態の破綻を予防することと,近い将来ARに対して再度開心術を施行することを回避するという観点から,重症ARの場合は推奨クラスI,中等症ARの場合でも推奨クラスIIaで大動脈弁手術の施行を推奨する.特に,上行大動脈拡大に関しては,大動脈二尖弁やマルファン症候群に伴うARの場合は,AR自体の手術適応のみならず上行大動脈径にも着目してフォローアップする必要がある.上行大動脈・大動脈基部拡大が主体である場合の手術適応に関しては次項に記載する. CQ 2 LVEF の保たれた(≧50%)無症候性重症AR に, LVESD index >25 mm/m2 で大動脈弁手術を推奨すべきか? LVEF の保たれた(≧50 %)無症候性重症AR はLVESD index >25 mm/m2 で大動脈弁手術を行ってもよい. 推奨の強さ 2:弱く推奨する(提案する)エビデンス総体の強さC(弱) 論拠 無症候性重症AR(ACC/AHA分類におけるstage C)においては,LVEF<50%であれば推奨クラスI, LVEF≧50%であっても高度に左室拡大がみられる場合においては推奨クラスIIaで外科手術の適応とされる1, 386). LVESDの絶対値よりもBSA補正したLVESD indexが予後予測に重要であるとする論文は以前より散見される30, 432).Dujardinら30)は無症状の患者であってもLVEF<55%(年間5.8%のリスク)あるいはLVESD index>25 mm/m 2(年間7.8%のリスク)があれば予後不良と報告した.またSambolaら432)は,重症AR患者の予後予測においてBSA<1.68 m 2の小柄な集団においてのみBSA補正することの意義が認められたと報告した.Sambolaらの患者群では23%のみ無症状であるが,Dujardinらの患者群では50%が無症状である. AHA/ACC の2014年のガイドライン1) では, LVESD>50 mmで推奨クラスIIaの適応, LVEDD> 65 mmで推奨クラスIIbの適応との記載があるが,「女性または小柄な患者においてはBSAで補正した数値を考慮することは適切である」と記載されている.一方, ESC/EACTS の2017年のガイドライン386) では, LVEDD>70 mmまたはLVESD>50 mmの場合に推奨クラスIIaの適応と記載があり,またBSA<1.68 m 2 の小柄な患者においてはLVESD index>25 mm/m 2で, やはり同様に推奨クラスIIaで適応ありとの記載がある. Mentiasら433)はクリーブランドクリニックのデータを用いて,LVEF正常の重症AR患者の,AVR施行群933人と,保存的治療群484人を比較した.87%が無症状であった.従来の閾値より低いLVESD index 20 ~25 mm/m 2の患者で,AVR施行群の方が保存的治療