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p.55 抽出テキスト

分類の タイプ1が多い402).三尖の弁と同様に逸脱している癒合側弁尖辺縁を中央部で縫縮する方法が基本だが,縫縮する範囲が広くなるため,三角切除を要する場合がある.また,非癒合弁尖も逸脱している場合があり,その場合は両弁尖の縫縮が必要である.接合をより深めようとして縫縮を強化するとAVAが小さくなることにも注意が必要である.さらに癒合部分が石灰化している場合には,切除して心膜パッチでの補填が必要な場合もある.二尖弁の弁輪拡大に対する手術方法の考え方は基本的に三尖と同じであるが,最近は積極的に基部を置換して,交連部の位置を180度方向に作り直してタイプ0,すなわち完全な二尖形態をめざすべきだという考え方も支持されている403).Sievers分類 タイプ2 はいわゆる一尖弁だが,弁尖の肥厚や石灰化が強くなり,正常な弁尖を温存して,心膜パッチを用いて二尖弁化する方法が提唱されている404).

5.1.2 手術成績

現在のところ,AVRとAVPを比較したランダム化比較試験はない.傾向スコアを用いたAVR(生体弁含む)とAVPの比較についての少数例での検討では,生存率はAVPで良好だが,再手術回避率は差がなかったと報告されている405).症例数の多いクリーブランドクリニック(平均年齢50歳,二尖弁60%) 406)やメイヨークリニック(平均年齢53歳,二尖弁40%) 407)からの報告では,AVPの10年生存率は80%以上,再手術回避率は80%程度であった.術前の重症ARおよび退院時の軽度以上のAR残存が,重症AR再発および再手術の危険因子であると報告されている406, 407).一方,60歳以下の生体弁置換術例では,人工弁機能不全発生率は15年で33%,20年で63%,再手術回避率は15年で70%,20年で38%と報告されている408).この年代の患者群で大動脈弁位での機械弁と生体弁の生存率の比較では,20年生存率は生体弁で66%,機械弁で52%と差はなかった409).以上から,AVPは生体弁でのAVRと同等の再手術回避率が期待できるといえるが,AVPの成績はあくまで症例数の多い施設の報告であることは十分認識しておくべきである.ARに対する治療方法の選択には,患者のライフスタイルを考慮した配慮が必要である.

大動脈基部の拡大に対しては,人工弁付き人工血管で置換するベントール手術が以前より行われ,成績に関して多くの報告がある.わが国からの機械弁を使用したベントール手術(平均年齢50歳)の報告では,20年の弁関連死亡回避率は85%,再手術回避率は96%である410).近年,年齢が若い場合など人工弁の使用を回避したい症例に対して,自己弁温存大動脈基部置換術が普及してきた.

Reimplantation手術考案者であるDavidらの報告では, 333人の手術症例(平均年齢46歳)で15年生存率は78%,再手術回避率は97%,中等度以上のAR回避率は96%,血栓塞栓回避率は93%ときわめて良好な成績である.良好な成績は,弁変性の強い場合は適応から外されていることを反映しており,重症ARを伴う症例は全体の20%と少ない411).リモデリング手術は,高齢でST junction拡大を伴う上行大動脈瘤に対しての成績は良好だが412),若年者の基部弁輪拡大に対してはAR再発が多い413).そこでリモデリング手術の欠点である遠隔期の基部弁輪拡大に対して,基部縫縮を加えることで7~10年の再手術回避率は90%と改善している414, 415).どちらの術式においても,どの程度の弁尖変化に自己弁温存手術が適応されるかは確立されていない.軽度の逸脱病変は修復可能であるが,パッチが必要となるほどの弁の変化が強ければAR再発が多くなる414).自己弁温存手術とベントール手術を比較した場合,機械弁ベントールとの比較では生存率および再手術回避率は同等だが,生体弁ベントールは,再手術が多くなる傾向がある.また出血塞栓イベント発生率は自己弁温存手術で低く,基部拡大に対する自己弁温存手術は確立されてきた416-418).しかし,術者の経験によって手術成績が左右される要因が大きい419)ということは十分認識しておくべきである.

5.2 外科治療の適応と時期

5.2.1 急性AR

急性ARは,その原因(IE,大動脈解離,外傷による弁破壊など)から考えても,内科的にコントロールが困難な場合が多く,外科治療の適応について早急に検討する必要がある.急性中等症または重症ARでは,左室拡張末期圧が急激に上昇し心エコー図検査における逆流ジェットが重症にみえない場合があるため,PHTの短縮やE/e’の上昇,僧帽弁早期閉鎖(心房収縮期に左室圧が左房圧より高くなるため)とそれに続く拡張期MRなどの心エコー図所見をもとに左室拡張末期圧の上昇を診断する.

5.2.2 慢性AR

慢性ARにおける手術適応は,「症状」,「LVEF低下」,「左室拡大」,さらに「他の開心術施行」の有無に規定される(表27,図15). a. 症状

重症ARによる「症状」が出現すれば,手術リスクが高