p.54 抽出テキスト
4.4 CT/MRI 大動脈基部から上行大動脈径の評価のみであれば単純CTでも可能であるが,弁尖および大動脈基部の詳細な形態評価では造影剤の使用が必要となる.Multidetectorrow CTの登場により,心臓CTの空間および時間分解能は著しく向上しており,冠動脈や心機能の評価も可能である.シネMRI(steady-state free precession: SSFP法)では造影剤を用いることなく,血液-心筋コントラストの高い動画像を得ることができる398).これにより,左室の大きさやLVEFの正確な計測が可能である399).また,位相コントラスト法を用いて大動脈基部の通過血流を測定することで逆流量と逆流率が算出できる.このように, MRIは心エコー図での逆流の重症度,左室サイズや機能などの評価が困難な症例に対して有用な画像診断法である(推奨クラスIIa).ガドリニウムを用いた遅延造影MRIは心筋線維化を検出する方法として確立されている.遅延造影MRIを用いて定量した心筋線維化が強いほど,大動脈弁術後の予後が不良であったとの報告もあるが400),エビデンスは十分ではない.ARに対する検査の推奨とエビデンスレベルを表26に示す. 5 外科治療 5.1 術式と成績 5.1.1 術式 ARに対する外科治療としては大動脈弁置換術(AVR)がすでに確立されているが,近年,大動脈弁形成術(AVP)も選択肢の一つとなった.特に機械弁置換の適応となる若年者においては,抗凝固療法を回避できる大きなメリットがある.弁形成術の方法については,後天性の変性によるものと,二尖弁のような先天尖の異常ではアプローチが異なる.後天性の変性については,Boodhwaniらの分類がある(図13).この分類のタイプ IaからタイプIcまでは基部拡大によるARであり,タイプIa,Ibには,弁付き人工血管置換術(ベントール手術)の適応となるものが含まれる.弁形成の場合は,拡大部位によって術式がそれぞれ異なってくる389).タイプIa ではST junction までの上行大動脈を人工血管で置換する方法が一般的で,タイプIbは拡大したバルサルバ洞を人工血管で置換する 目的で,大動脈弁を人工血管内に縫着する術式(reimplantation)と,外科的弁輪部に人工血管を直接縫合する術式(リモデリング)がある.タイプIcでは基部弁輪の縫縮が必要で,人工弁輪が各種開発されており,心臓内の左室流出路に縫着する方法と心臓外に縫着する方法があるが,まだ確立されたものはない.タイプIIに分類される逸脱病変の修復方法として,弁尖自由縁をPTFEを用いて連続縫合で縫縮する術式,および弁辺縁中央部分を縫縮するcentral plicationがよく用いられている.交連部近傍の弁尖に大きな穴を伴い逸脱している場合は,小さな心膜パッチを用いて修復する場合もある.心膜パッチはタイプIdの弁尖穿孔にも有用であるが,タイプIIIの弁可動制限に対して弁尖拡大目的で用いる場合は,やや成績が不良である401). 二尖弁には癒合した2つの弁尖が逸脱しているSievers 表26 AR に対する検査の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル AR が疑われる症例の逆流の重症度・病因,左室サイズ/ 機能などを評価し,治療介入の時期を決定するためのTTE I Bバルサルバ洞拡大,上行大動脈拡大,大動脈二尖弁などがみられる症例で,ARの有無や重症度を評価するためのTTE I B中等症または重症AR 症例で,AR の重症度や病因について十分な情報がTTEでは得られない場合に行うTEE I B大動脈二尖弁の症例について,弁尖形態, AS・AR の程度,大動脈基部形態/ サイズを評価し,今後の臨床経過の予測,治療介入の時期決定をするためのTTE I B大動脈二尖弁の症例において,TTE のみでは正確な大動脈基部や上行大動脈の形態/ サイズの評価が困難な場合に行う心臓MRI および心臓CT I C中等症または重症AR 症例のうち,TTEでは逆流の重症度,左室サイズ/ 機能などの評価が困難な症例に対する心臓MRI IIa B TTE での評価が困難な症例や,臨床症状と心エコー所見に乖離があるような症例における,重症度・血行動態評価のための心臓カテーテル検査IIa C大動脈弁形成を考慮している症例における大動脈弁,大動脈基部の評価のための心臓CT IIa C