p.46 抽出テキスト
血性心疾患,心房細動,ショック,腎不全などが報告されている353-356). 5.1.4 再手術回避率 a. OMC OMCの再手術回避率は,7年で93~96% 340, 351),10年で87~89% 337, 338, 357)と報告されている.再発のリスクとしては高度弁下組織病変の存在338)や術後遺残MSもしくはMR 347)が挙げられている.PTMCやCMCと同等339-341, 357)あるいは優れていると報告されているが340, 347, 351),人工心肺のリスク,放射線曝露の可否,コストなど,さまざまな要素を考慮して適切な術式を選択すべきである. b. MVR 機械弁に関しては構造劣化がないため,10年再手術回避率はMSに限っても95%を凌駕しており346, 358),近年報告されたMRも含めた30年の成績でも85%を下らない356, 359).諸報告によると生体弁では15年を過ぎると再手術回避率は75%を切り,65歳以下では50%を下回る360).予測耐久年数は70歳以上で19.4年であるのに対し,60歳以下では11.4年に過ぎない361).したがって,患者背景を考慮し,人工弁の耐久性と抗凝固療法やIEのリスク・ベネフィットをよく吟味して人工弁を選択すべきである. 5.2 PTMCの成績 PTMCの施行件数は近年減少傾向にあり,周術期の治療成績については古い文献からの報告が主となる.米国の国立心肺血液研究所による738人の全国集計によれば,重症MRが3%,塞栓症が3%,心タンポナーデが4%,死亡率が3%といずれも高めであるが,25人以上の経験を有する施設では合併症の発生が少ないと報告されており,施設や術者の熟練度が合併症発生低減に重要である362, 363).熟練した術者が施行する場合,PTMCの技術的成功率は98%以上であり,これにより平均左房左室間圧較差は術前12~13 mmHg から術後3~6 mmHg に, MVAは1.0~1.1 cm 2から1.9~2.0 cm 2に増大する.また通常,心拍出量も1割程度増加する364). PTMCに伴う合併症に関しては,死亡率は0~3%であり,主な死因は左室穿孔である365-373).その他の手技に伴う合併症としては血性心嚢液貯留(0.5~12%),塞栓症(0.5~12%),高度MRの発生(2~19%),心房中隔欠損残存(10~90%)と報告されている.心房中隔欠損残存はほとんどの場合,軽症であり,また大半の例で次第に縮小していくことが知られている374). PTMC直後の成否の予測因子に関する検討では,僧帽弁形態のほかに年齢,外科的交連切開術の既往,NYHA 心機能分類,高度狭窄,MR,肺高血圧,高度TR,バルーンサイズなどの報告がある375, 376). また,PTMC施行後3年から5年程度の長期成績については,弁形態やNYHA心機能分類,年齢,開大後MVAなどに依存し,生存率は5年で93%と良好であるとの報告や363),弁に石灰化を有する例や,弁尖の肥厚が強い例,弁下組織の変化が強い例では再狭窄発生率が高くなるとの報告がある377).また予後不良の予測因子は,術前Wilkinsスコアが8点以上,高齢,外科的交連切開術後,NYHA心機能分類IV度,術後肺高血圧,術前MR 2度以上,術後MR 3度以上などが報告されている366).さらに長期にわたってPTMC後の成績を観察した研究では,PTMC後20年の心事故回避率は30%程度であったとの報告がある378). PTMCの際に用いるバルーンの違い(イノウエバルーンカテーテルとダブルバルーンカテーテル)に関して,長期予後に有意差はみられなかった379). 5.3 外科治療とPTMCの適応と時期 5.3.1 治療適応の基準(図12,表21) MSに対する介入基準は,自覚症状とMVAによって規定される.一般的には薬物治療を行っても労作時呼吸困難の臨床症状がありMVA≦1.5 cm 2 の場合(中等症および重症MS)には,治療介入(外科手術またはPTMC)が推奨クラスIの適応と考えられるが340, 380, 381),MVA>1.5 cm 2(軽症MS)の場合にも症状があり,運動負荷などによる一定の要件を満たせば治療介入を考慮してもよい(推奨クラスIIb) 382). 中等症以上のMSで無症状の場合も,新規発症心房細動や適切な抗凝固療法下で塞栓症を繰り返す場合は治療介入が推奨される(推奨クラスIIb).MSは進行がきわめてゆっくりであるため,自然と活動度を制限していることが多い.そのため一見,無症状であることもしばしば認められるため,介入の適応決定には,運動負荷心エコー図検査が有用である.安静時に無症状である中等症以上のMSにおいて,運動負荷にて自覚症状出現,僧帽弁圧較差15 mmHg以上,または肺動脈収縮期圧60 mmHg以上となれば治療介入を検討する383)(推奨クラスIIa).また,外科的介入が高リスクで手術適応にならないが,臨床症状が強い場合は,PTMCに適した形態でなくても, PTMCを試みる場合がある384).CABGやその他の弁膜症などで開心術が行われる場合は僧帽弁に対する同時介入も検討する.(重症MS: 推奨クラスI,中等症MS: 推奨ク