p.43 抽出テキスト
3 重症度分類 重症度分類は,治療法選択や予後の観点から重要であり,弁膜症に対する介入は,通常重症例に行うのが原則である.しかし,MSの場合,経皮的僧帽交連切開術(PTMC)に適した弁形態で有症候性であれば,中等症(MVA 1.0~1.5 cm 2)であってもPTMCの適応とされてきた.MS以外の弁膜症は通常,重症でないと症状の発現を認めないが,MSの症状は心拍数に強く依存するため,MVA 1.0~1.5 cm 2でも頻脈下では症状発現がみられるためである. そこで,2014年AHA/ACCガイドライン233)では,重症MSを「症状が出現し,介入により症状が改善する重症度」と定義し,MVA 1.0~1.5 cm 2を重症MS,MVA<1.0 cm 2を超重症MSと新たに定義している.一方,2017年ESC/ EACTSガイドライン3)では,中等症から重症 MS(MVA ≦1.5 cm 2)を “clinically significant MS” と再定義して介入適応の目安としたものの,従来の分類を引き続き用いている. 本ガイドラインでは,従来どおり,MVA<1.0 cm 2を重症MS,MVA 1.0~1.5 cm 2を中等症MSと定義した(表18). なお,mPGや拡張期PHTは,弁血流量,左房左室コンプライアンスや心拍数に大きく影響を受けるため,参考程度に用いることが妥当と思われる. 4 診断 4.1 症状と身体所見 最もよくみられる初発症状は労作時呼吸困難である.時には左房内血栓に基づく全身塞栓症で発症することもある.これは心房細動例にみられることが多いが,時に 洞調律例においてもみられる. 聴診でI音の亢進,僧帽弁開放音,心尖部拡張中期ランブル等を聴取する.重症化が進むと弁の可動性が低下し,僧帽弁開放音が消失する(mute MS).右心不全例では肝腫大,末梢浮腫等を認める. 4.2 心エコー図検査 心エコー図検査は,MSの診断,重症度評価(表18),および血行動態評価に有用で,症状や身体所見が変化した際にはTTEを行うことが推奨される(推奨クラスI).軽症 MSでは3~5年ごとに,中等症 MSでは1~2年ごとに,重症MSでは1年ごとにTTEを行うことが推奨される233).断層心エコー図で僧帽弁尖開放の低下と弁尖肥厚を認めればMSと判断される.特にリウマチ性では前尖の特徴的ドーム形成や,交連部の癒合,腱索の短縮や癒合など弁下組織の変化を認める328).僧帽弁レベルの短軸像で弁口をトレースすることによりMVAを計測する(プラニメトリ法).連続波ドプラ法ではmPGやPHTを測定する.PHTからMVAを算出することができるが,リウマチ性に限られること,この方法は圧較差を評価しておりMS以外の左室圧や左房圧を修飾する病態の影響を受けること,およびPTMC直後の評価には使用できないことなどに注意が必要である.MVAはプラニメトリ法を基準測定法とするが,測定断面のずれにより過大評価するため,PHT法の結果と乖離がある場合は連続の式やPISA法を用いた測定法も参考にする.下大静脈の拡張の程度から右房圧を予測し,TRがある場合には簡易ベルヌイ式を用いて肺動脈圧を推定できる. TTEはPTMCに適した僧帽弁形態かどうかの判断に有用である.PTMCは交連部を裂開する手技であるためリウマチ性MSが適応となることがほとんどである.石灰化が強い交連部は裂開が難しく,弁尖や弁下部肥厚が強い場合は交連部に圧力がかかりにくいため十分なMVA増加を得ることが難しいとされている.一方,PTMCによりMRが増悪する可能性があるため,術前に有意なMR 表18 MS の重症度評価 軽症中等症重症 MVA 1.5~2.0 cm2 1.0~1.5 cm2 <1.0 cm2 mPG* <5 mmHg 5~10 mmHg >10 mmHg拡張期PHT* <150 ミリ秒150~220 ミリ秒>220 ミリ秒* mPGおよび拡張期PHTは血行動態の影響を受けるため,参考程度とする.