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p.42 抽出テキスト

第3章 僧帽弁狭窄症(MS)

6.2.3 わが国での適応基準

わが国でも有症候性重症MR患者へのMitraClip ®治療の安全性・有効性を確認する多施設共同治験が行われ, 30日の成績が発表された315).対象は,一次性,二次性(LVEF≧30%)を含み,弁膜症チームによる判断で外科的開心術が困難とされた患者である.平均年齢80歳で,約半数が二次性MRであった.MitraClip ®治療後87%でMR≦2+となり,30日後の主要有害イベントおよびデバ

イス合併症は0%であった.この結果を受け,わが国では一次性ならびに二次性MRが適用となった(表17) 316).適用基準における欧米との違いは,LVEFの下限は欧州で15%,北米では20%だが,わが国では30%であることである.COAPT試験の結果を受けて,今後わが国でもLVEFの下限が30%から引き下げられる可能性もあるが,現時点では不明である.

1 病因

リウマチ性MSの発生率は先進国においては大幅に減少している317).一方で,高齢者では弁輪石灰化などの変性によるMSが増加しているが318),重症化することは稀である319).また,稀ではあるが未分化乳頭筋,パラシュート僧帽弁,mitral arcade,重複僧帽弁口などの先天性僧帽弁異常に伴うものもあり,通常,大部分が幼児期または小児期に診断される.

2 病態と自然歴

MSの主病態は弁狭窄に伴う左房から左室への血液流入障害である.左房圧が上昇することにより肺静脈圧も上昇し,呼吸困難を主とする症状が出現する.通常,運動,妊娠,甲状腺機能亢進症,貧血,感染および心房細動などによる頻脈で初めて症状を認めることが多い.病状の進展とともに心拍出量は低下し,また肺高血圧のために右心系の拡大を来たす.右心系の拡大はTRを生じ,肝腫大をはじめとした右心不全症状を引き起こすことになる.左房は拡大し心房細動が起こり,しばしば心房内

に血栓形成を見る.左室機能は通常保たれているが,時に機能が低下している症例があり320),リウマチ性心筋炎の後遺症321)または硬化した僧帽弁複合体の関与322, 323)などが考えられている.

リウマチ熱に罹患した後,およそ15~20年の無症状の時期を経て45~65歳で症状を発現することが多い.未治療のMSに関する自然予後の研究によれば,MSは緩徐ながらも持続的に進行する疾患であり,10年生存率は全体として50~60%である324, 325).生存率は初診時の症状に依存し,NYHA心機能分類III度では5年生存率は62%と比較的良好であるが,NYHA心機能分類IV度では15%と低い326).現在では,外科手術やカテーテル治療後の予後は著明に改善してきたが,いずれにしろ進行性の疾患であることには間違いない.進行速度についてはきわめて個人差が大きくその予測は困難であるが,MVAは年間平均約0.09 cm 2程度縮小し,軽症MS例で進行が速い傾向にあり327),3分の1の患者では年間平均約0.1 cm 2以上の縮小がみられたとの報告がある317).