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p.39 抽出テキスト

後の退院時にさらに高率(37~44%)に中等症以上の心房性機能性MRが合併し,退院後の心不全再入院に関連するという報告もある301, 302).

心房性機能性MRの機序に関する検討は複数存在する138, 139, 146, 147, 294, 297-300).左房と僧帽弁輪の拡大を伴う前後尖の接合不全が主病態であることはいずれの研究でも共通している.さらに,僧帽弁輪のsaddle shapeの消失138, 299, 300),後尖のテザリング138),あるいは,テザリングを受けて左室後壁方向へ屈曲して接合に関与できなくなる後尖のhamstringingとよばれる現象(図11) 139),僧帽弁輪拡大を代償するために弁葉面積が大きくなる弁葉リモデリングが不足していること147, 299, 300),これらが心房性機能性MRの機序として提唱されている.しかし,すべての心房性機能性MR例にこれらの特徴が揃っているわけではない.また,これらの因子にどのような相互関係があるかについて明確には判明していない.

5.2 診断

心室性機能性MRの原因となるような左室の局所壁運動異常や全体の収縮能低下がなく,心房拡大が明らかであり,弁尖や腱索に器質的異常が乏しいにもかかわらず生じているMRを心房性機能性MRとよぶ.LVEFについては50%以上と定義することが多い.また,厳密に心房性と定義するために左室拡大を伴う例を除外することもある137, 138, 147, 294, 297-299).しかし,心房性機能性MRにおいても長く経過すると軽度の左室拡大や左室収縮能低下が出現するため,これらを伴っていてもその起源や主病態が心房拡大であれば心房性機能性MRとよんでよい.前述したとおり,心房性機能性MRのほとんどは心房細動例で認められ,特に長期持続性心房細動例に生じやすい148).後尖のテザリングあるいはhamstringing現象がある場合には,前後尖の接合にずれが生じ,前尖の先端が後尖の先端より心房側に位置するようになって138, 139),わずかに弁輪面を越えることもある137).この現象は,元来心室性機能性MRにおいて前尖のpseudoprolapse 303, 304)あるいはoverriding 305)として報告されていたが,心房性機能性MRでもみられる.

5.3 内科治療(表16)

有症候性の心房性機能性MRを伴う例では,まず心房細動を合併する心不全に対する薬物療法を十分に行う必要がある(推奨クラスI).薬物療法によっても心不全症状および有意な機能性MR,機能性TRが併存すれば侵襲的治療も考慮しなければならない.心房拡大が高度ではな

い症例では洞調律化を図るのがひとつの方法である.カテーテル・アブレーション後に洞調律を維持できた群では,できなかった群と比べて,左房サイズおよび僧帽弁輪の縮小の程度が大きく,心房性機能性MRが有意に改善したとの報告がある146).したがって,アブレーションによる洞調律維持が心房性機能性MRに対する有効な治療のひとつであると考えられる(推奨クラスIIa).一方で,左房拡大が明らかで,カテーテル・アブレーション治療によっても洞調律を維持することが難しいと判断される心房性機能性MR例も少なくない.その場合には外科治療を考慮する.しかし,両治療の適応を分ける適切な左房サイズのカットオフ値はまだわかっていない.

左房左室

僧帽弁逆流

図11 心房拡大による後尖のテザリングとhamstringing

現象左房拡大が著明になると,左房が左室後壁の後ろに潜り込むような拡大を呈するようになり,後尖側の僧帽弁輪(赤丸)は後方(赤矢印)に偏位する.一方,左室後壁は前方に折れ曲がるようになり,後尖の先端は後方に位置する左室乳頭筋に引っ張られる(後尖のテザリング)(青矢印).その結果,後尖は折れ曲がったまま可動性を失って前尖と接合できなくなる.このような後尖に生じる機能制限を後尖のhamstringing現象とよぶ.全例に本現象を伴うわけではないが,心房性機能性MRの原因となる典型的な僧帽弁形態のひとつである137,139).後尖のhamstringing現象には,前尖の先端が後尖の先端より心房側にずれて接合する前尖のpseudoprolapseあるいはoverridingとよばれる現象も伴うことが多い.図のように逆流が左房後壁方向へ偏位する原因となる.