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p.35 抽出テキスト

4.3 外科治療

4.3.1 術式と成績

a. 弁輪形成術

テザリングの軽度な症例では,二次性MRに対する弁形成術は小さなサイズの人工弁輪(1もしくは2サイズダウン)を用いたundersized mitral annuloplasty(MAP)が行われるのが一般的である.テザリングの強い症例では,本来左室の疾患である二次性MRに対して弁輪のみにアプローチするundersized MAPでは再発率が高いことが問題とされており250, 254, 255),人工弁輪による特に後尖のテザリングの悪化や,術後左室のリモデリングの進行が再発の要因となる.小さなサイズの人工弁輪を用いることによる機能性MSも報告されている256). b. 両尖弁下温存(腱索温存)MVR

二次性MRでは弁尖や弁下には一次性病変を認めないため,両尖弁下温存のMVRが可能である.左室と僧帽弁の連続性を温存することでMVR後の心機能低下を最小限に抑えうる.二次性MRに対する人工弁輪のみを用いた僧帽弁形成術とMVRのランダム化比較試験では, MVRで有意に再発率が低かった255).このように,二次性MRにおいては,逆流の制御という観点からは前述の

undersized MAPよりも確実な手技であるが,全死亡率や左室のリバースリモデリングにおいては両者で有意差を認めていない255).MVRでは,人工弁関連の合併症も考慮する必要がある. c. 弁下への追加手技

病態の本質であるテザリングそのものを矯正することを目的とする手技である.弁下への追加手技に関しては,弁形成時のみでなくMVR時に乳頭筋接合術(approximation)と乳頭筋の僧帽弁前尖弁輪方向への吊り上げを行う方法も考案され,有効性が報告されている257).また,弁下手技とは定義が異なるが,undersized MAPへの追加手技としてedge-to-edge repairやleaflet augmentationもあげられる.弁下手技の代表的なものを以下にあげる. i. 乳頭筋接合術

前後の乳頭筋をプレジェット付きの糸やePTFEの人工血管で引きよせて乳頭筋間距離を縮めることでテザリングを矯正する方法である258, 259).弁下手技に関しては唯一ランダム化比較試験が施行された術式であり255),乳頭筋接合術を追加した群で,中等症以上のMR再発は有意に少なく,術後リバースリモデリングは有意な改善を認めた. ii. 乳頭筋吊り上げ術

後乳頭筋もしくは両側の乳頭筋を弁輪に吊り上げてテザリングを矯正する方法である.乳頭筋を吊り上げる位置は後方trigone 260),前尖弁輪中央261)のほか,それぞれの乳頭筋を同側のtrigoneへ吊り上げる手技も報告されている262). iii. Chordal cutting

僧帽弁前尖の二次腱索を切断することで僧帽弁前尖が収縮期に左室方向へ牽引されるのを軽減させる術式である263).

上記の追加手技は,いずれも生命予後の改善には至っておらず,高度心機能低下,リモデリングを伴う症例について,undersized MAPの問題をすべて解決できるものではない.しかし,それぞれMRの再発の抑制や左室のリバースリモデリングを改善するなど,ある程度の有効性が報告されており,undersized MAPの成績を向上させうる手技である. d. 左室形成術

STICH試験264)では虚血性心筋症に対してCABGに左室形成術を追加することによる予後改善効果を認めなかった.しかし,STICH試験の左室形成術は,心尖部瘤切除がメインであり,弁下部テザリング軽減も意図されず,また左室形態を長楕円体に近づける意図もなかった

表13 左室収縮機能低下に伴う二次性MR に対する検査の

推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

二次性MR が疑われる症例の,MR 重症度・病因,左室サイズ/ 機能/ 壁運動,左房や弁輪サイズ,肺高血圧の程度などを評価するためのTTE I C僧帽弁カテーテル治療時のTEE によるモニタリングI C中等症~重症二次性MR の原因検索のための,冠動脈評価/心筋バイアビリティーの評価 (負荷シンチ/ 負荷心エコー図,冠動脈CT,冠動脈造影) IIa C有症候性中等症MR の負荷時の血行動態把握のための運動負荷心エコー図検査IIa C TTE での評価が困難な症例や,臨床症状と心エコー所見に乖離があるような症例の心臓カテーテル検査による重症度・血行動態評価IIa C TTE で十分な情報が得られない場合の,左室サイズ・機能,心筋障害の程度の評価のための心臓MRI IIb C