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p.34 抽出テキスト

ショックなど低心拍出に伴う症状を呈する.心不全悪化に伴い二次性(機能性)MRは悪化し,MRがさらに左心不全を助長するため,心不全入院時には重症MRを伴う重症心不全として搬送される場合が多い.薬物療法による肺うっ血や浮腫などの心不全兆候の改善とともにMRも軽減することがしばしばある.心不全時には,肺ラ音の聴取とともに心尖部領域での汎収縮期雑音およびIII音,ときにIV音を伴うギャロップ音が聴取される.陳旧性心筋梗塞や拡張型心筋症などによる慢性心不全患者の増悪時には,機能性MRの出現・増悪を念頭に診察し,各種検査を行う必要がある.

4.2.2 心エコー図検査

病歴・身体所見・心電図・胸部X線写真などから心不全が疑われる場合には,TTEによるスクリーニングを行う.カラードプラ法にてMRを認めるにもかかわらず,逆流の成因となる弁の器質的変化が認められない場合には二次性(機能性)MRの可能性を考える.TTEでは,局所またはびまん性の左室収縮能低下と左室拡大の程度を評価し,長軸断面・四腔断面・二腔断面で,弁のテザリングの有無と程度を観察する(推奨クラスI).多断面にて,弁自体の器質的異常がないことを確認する.テザリングの程度は,断層心エコー図ではテンティング面積,テンティング高(長)を計測するのが一般的である(図9).断面によって僧帽弁輪の高さが異なるため,同一症例では同じ断面での経時的計測を行う.計測部位については現時点ではっきりとした決まりはないが,通常は傍胸骨長軸断面で慎重に弁輪の中央部を通る断面で,収縮中期で計測する249).テザリングの著明な症例ほど逆流は大きくなり142),人工弁輪を用いた弁輪形成術後の再発にも関連するため,テザリングの強さの目安として計測すると

よい.二次性MRの成因である左室機能低下の成因・程度が多様性であるため,術後再発を予測するための基準値の設定は困難である250-252).

カラードプラでは,長軸断面では左房中央や後壁方向へ向かう逆流ジェットが観察される.また通常交連間にわたる弁接合部からの幅広いジェットであり,心尖部からの観察では,交連-交連を結ぶ断面(四腔断面と二腔断面の間で描出される)で最も幅広く観察される.

TEEは,弁の性状と逆流部位の詳細な観察に有用である.特にカテーテル治療の適応となりうる症例では3Dエコーを用いた観察が重要であり,TEEでの多断面を駆使した診断が大きな役割を担う.TEEによる術中モニタリングは必須である(推奨クラスI).

また,安静時には軽度の機能性逆流であっても,労作時に逆流が増加し症状出現につながる症例もあるため,負荷心エコー図検査を施行し,労作時の逆流増加の有無や推定右室圧上昇の有無を診断する(推奨クラスIIa) 63, 253).虚血性MRに対し再灌流療法を考慮する場合には,薬物負荷心エコー図検査による心筋バイアビリティ評価が有用であるとの報告もある.

4.2.3 その他

心臓MRIによる,左室や右室のサイズと収縮性,MRの重症度評価は,心エコー図検査での評価が十分でない場合に有用である(推奨クラスIIb).機能性MRでは,左室心筋の障害の程度を評価するため,遅延造影による評価を行うこともある.

心筋血流シンチなどで,心筋バイアビリティの評価を行うことは有用である.

冠動脈造影検査は虚血性心疾患の診断のために必要な検査であるが,冠動脈疾患の危険因子が少なく,冠動脈CT検査にて冠動脈病変が否定的な場合は必須ではない.逆流の程度や血行動態の評価は,心エコー図ドプラ法で診断されるため,右心カテーテル検査や,逆流評価を目的とした左室造影はかならずしも行う必要はないが,非侵襲的検査の結果が合致しない時にはこれら侵襲的検査による血行動態・重症度の評価が推奨される(推奨クラスIIa).

左室収縮機能低下に伴う二次性MRに対する各種検査の推奨度を表13 に示す.

左室

テンティング高(長)

テンティング面積

左房

図9 TTE によるテザリングの評価