p.33 抽出テキスト
よばれるが,両者は基本的に同様の病態である.心不全症例の半数以上にみられ,心筋梗塞の20~40%にみられる235-237).この弁膜症は左室遠心性リモデリング(拡大)をきたす心筋疾患(梗塞を含む)にみられ,一次性の僧帽弁尖異常に起因するものではないことから,二次性MRとよばれる.二次性MRを呈する症例では,心不全や心臓死が増加する.二次性MRは予後悪化の独立した危険因子である.二次性MRでは,重症MRはもちろんのこと,軽症MRであっても有意に予後を悪化させることは特筆すべきことである236).二次性MRの重症度はダイナミックに変動し,安静時の逆流重症度のみならず,運動時の逆流重症度は予後と密接に関連する238).運動負荷心エコー図検査による逆流重症度評価は重要である. 二次性(機能性)MRでは,僧帽弁尖の収縮期閉鎖位置が弁輪よりも心尖方向に変位している(図7).この所見は1979年に心エコーを用いて発見され239, 240),「弁尖テザリング」として理解されている.「左室拡大により外側へ変位した乳頭筋が弁尖を異常に強く牽引しその可動性を低下させ(テザリング),弁尖閉鎖不全をきたす」という概念である(図8) 141).乳頭筋機能不全が虚血性(二次性) MRをきたすとも言われていたが241),現在ではあまり支持されていない242).むしろ,乳頭筋機能不全は乳頭筋の基部から先端までの距離を長くさせ,乳頭筋先端を弁尖・弁輪に近づけるために,テザリングによるMRを軽減させると考えられている243, 244).また弁輪拡大に関しては,弁輪拡大があまり重要でないという考え144, 245)と,弁輪拡大によりMRが重症化するという考え147, 246)と両方ある.弁輪形成術により弁輪を十分に縮小しても,左室が拡大 すると有意なMRが再発する247, 248). 4.2 診断 4.2.1 症状と身体所見 慢性二次性(機能性)MRは,基本的には左室機能低下に起因する逆流であるため,患者の症状は一般的な慢性心不全症状と同様である.息切れや顔面・下腿浮腫などの左心不全・右心不全症状に加え,重症例では低血圧や 正常 左室 大動脈左房二次性MR 図7 心筋梗塞慢性期の二次性MR 例にみられる弁尖閉鎖 位置異常左の正常例では弁尖(白矢印)は弁輪(黄矢印)レベルで閉鎖する。しかし,右の二次性MR例では,弁尖(白矢印)は弁輪レベル(黄矢印)で閉鎖できず,心尖方向に偏った位置で閉鎖している. 正常 左室 左室後壁 後尖前尖 左房 大動脈大動脈 左室前壁正常なテザリング左室 左室拡大前の乳頭筋の位置 テザリングの増大 僧帽弁逆流 左室拡大 図8左室収縮機能低下に伴う二次性MR の機序左室拡大により外側へ変位した乳頭筋が僧帽弁尖を異常に牽引し,その可動性を低下させ(テザリング),閉鎖を阻害し,弁逆流が出現する.