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p.32 抽出テキスト

避けるべきであり,後尖の一つのscallopに限局した病変等がよい適応となる.無症状でトリガーのない症例に対する早期形成術について,AHA/ACCのガイドラインでは確実な形成の成功率が95%以上で手術死亡率が1%以下の経験豊富な施設で行うこととしている32).すなわち,形成術の成績は弁膜症チームの経験,特に外科医の技術に依存することを認識しておく必要がある188, 225).

エビデンス

トリガー出現以前の早期手術を支持するいくつかの報告がある. 1 無症状の重症MR症例で,早期手術群(トリガーな

し,すなわちLVESD<40 mmかつLVEF>60%,心房細動なし,肺高血圧なし)とトリガー出現後に手術を行った群の2群,それぞれ207人の比較を行った研究では,早期手術群で有意に心臓関連死亡率(12年でそれぞれ1%,6%,P=0.010)および心臓関連イベントの発生率(同様にそれぞれ4%,19%, P=0.001)が低かったと報告している218).年齢を考慮したサブ解析では,早期手術は特に50才以上の症例で有益であろうとしている. 2 4ヵ国,6施設からのflail leafletによる重症MRの

レジストリーからの研究では,そのサブ解析のなかで,早期手術群とトリガー出現まで内科治療を行った群の2群(計790人)で比較を行っている217).診断されてから10年での生存率は,それぞれ,87%および82%(P=0.04),心不全発症率は5%および20%(P<0.001)で,早期手術が予後を改善させたことが示されている. 3 心不全症状があり,LVESD≧40 mmかつLVEF<

60%をクラスIのトリガー,心房細動および肺高血圧をクラスIIのトリガーとして,クラスIトリガーが出現するタイミングで手術を行った群,クラスIIのトリガーで手術を行った群,形成術が確実に可能な病変でトリガーなしで早期手術を行った群の比較を行った研究では,術後の入院期間は早期手術群が最も短く,術後15年での生存率はそれぞれ42%, 53%,70%,心不全の発症率は35%,27%,15%であり,早期手術を支持する結果が得られている210).

注意点

前述の通り,早期手術の適応は耐久性のある形成術を安全に施行できることが前提であり,形成術が不成功となり逆流の再発があれば予後は不良となるため180),適応は慎重に決定するべきである.MRの重症度は重症であることも前提であり,重症であることが

不確かな場合や,種々の条件から早期手術選択に苦慮する場合は,左房の大きさ220, 226, 227),運動負荷心エコー図検査による肺高血圧の変化228),心肺運動負荷試験による運動耐容能62, 229)や,心筋ストレイン230, 231),BNP値9),経時的な左室機能低下の有無なども参考にする.

また,手術時期の決定の指標として用いられる左室径は,欧米のエビデンスに基づくため,比較的体格の小さな日本人に用いる場合は体格に応じた補正値を参考にする必要がある.今回のガイドラインではBSA≦

1.7 m 2 の症例では,左室拡大の指標とされるLVESD

≧40 mmに対応して,BSA補正値であるLVESD index≧24 mm/m 2を提示している.

3.4 内科治療とフォローアップ

血行動態の不安定な急性MR患者においては,内科的薬物療法による血管拡張薬や利尿薬を用いた前負荷・後負荷の軽減に加え,必要に応じて強心薬投与・大動脈バルーンパンピングや経皮的心肺補助装置などのサポートによる救命・集中治療を行い,血行動態が改善した後の外科手術につなげる.

慢性MR患者で,全身状態などから外科手術による治療が困難である場合には利尿薬,血圧が保持されている場合には血管拡張薬などによる内科治療での長期フォローアップが必要となる.左室拡大や収縮能低下をきたしている外科手術困難例や,術後に心機能改善なく慢性心不全が遷延する場合には,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)やβブロッカーの長期投与を考慮する232-234).

手術適応にならない無症候性重症MR患者では半年から1年に1回のTTEによるフォローアップ,中等症MR患者では1~2年に1回のTTEによるフォローアップを行う.

4 二次性(機能性)MR: 左室収縮機能低下に伴うMR

4.1 病歴と自然歴

二次性(機能性)MRは拡張型心筋症,心サルコイドーシス等の疾患に認められる.虚血性心疾患(おもに心筋梗塞の急性期および慢性期)でも発症し,虚血性MRと