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p.27 抽出テキスト

雑音最強点は心尖部であることが多いが,後尖逸脱例では心尖部から胸骨左縁にかけて聴取される.さらに僧帽弁逸脱や腱索断裂例の中には胸骨左縁から心尖部まで広範な領域に雑音を聴取し,最強点を同定できない場合もある.

3.2.3 心エコー図検査

身体所見でMRが疑われた場合,次に必要な検査はTTE(推奨クラスI)である.TTEを適用すれば,MRのメカニズム同定,重症度の定量的評価,心機能や血行動態の評価と僧帽弁形成が可能かどうかを診断することができる.

MRのメカニズム評価ではCarpentier分類が用いられる.Carpentier分類のタイプIは弁尖のサイズや動きは正常で弁穿孔や先天性のクレフト,弁輪拡大によるもの,タイプIIは弁尖の動きが過剰なもので逸脱や腱索断裂を指し,タイプIIIは弁尖の動きが制限されたもので収縮期も拡張期も制限されるIIIaと収縮期だけ制限されるIIIbがある.一次性MRはタイプIとII,IIIaが相当する149).このようなメカニズム診断は外科治療法の選択に深く関わっている.特にタイプIIでは逸脱あるいは腱索断裂の部位を同定することが重要である.

タイプIIの逆流診断では傍胸骨長軸像,短軸像と心尖部交連部像を組み合わせて逸脱部位診断ができる.傍胸骨長軸像はA2とP2のいずれが左房に落ち込むか,あるいは両者が落ち込むかを診断できる.A2 やP2以外のA1,P1やA3,P3逸脱は交連部像で落ち込む部位を明確にする.逸脱部位診断ではカラードプラ法の逆流シグナルの方向も重要な情報である.原則として逆流ジェットは逸脱部位の反対側に向かう.たとえばA2逸脱は左房後方に向かい,P1逸脱は左房の中隔方向に向かう.カラードプラシグナルの方向を同定するためには,加速血流と逆流ジェットの両者が確認できる断面を選択することが重要である33, 162).

重症度評価(表10)にはドプラ法を用いたEROA(cm 2),逆流量,逆流率が用いられる.同時に半定量評価としてカラードプラ法による逆流ジェットの縮流部幅,逆流ジェットの左房面積に対する比を用い,定量評価との整合性を確かめる必要がある.また,特に逆流ジェットが偏位し,その持続が収縮末期だけの場合には,静止画での逆流ジェット評価には限界があるため,特にその持続時間に注目すべきである33).

中等症~重症MRで,もしTTEで診断に耐えうる画像が記録できなければ,TEEが有用である(推奨クラスI). TEEはTTEと同様の断面を得ることが可能で,画質はTTEより優れており,TTEだけでは観察困難な音響陰影

に隠れた部位を明瞭に描出することも可能である.詳細かつ全体的,系統的に記録された画像は逆流のメカニズム診断,部位診断と弁形成術の可能性を推定するために必須の情報を提供する.特に3D TEEによる3Dデータは,近年の技術的進歩で時間分解能が向上し,左房から僧帽弁全体を観察するSurgeon’s view(またはEn face view)は外科的弁形成の術前検査として,より多くの情報を提供しうる(推奨クラス IIa) 34, 163, 164).

ただし,TEE施行時の鎮静剤による血行動態の変化は,逆流重症度を過小評価する傾向にあることに注意が必要である.たとえば術中エコーでは,全身麻酔の影響や術中ポンプによる血流量低下は逆流量を減らすため,逆流重症度評価には不適切である165).

また,運動負荷心エコー図検査は,労作性の症状があっても安静時心エコー図検査では重症MRではない場合や,重症MRで症状が不明確な場合に用いられる(推奨クラス IIa).そのほか労作による血行動態の変化や予後推定に有用である53, 56, 166, 167).

3.2.4 その他

近年では,心臓MRIを用いれば左室や右室のサイズと収縮性,MRの重症度を評価することができるため, TTEで不十分な記録しか得られない場合に有用である(推奨クラス IIb).ただし,解剖学的変化から逆流メカニズムを明らかにすることには限界がある168-170).

心臓カテーテル検査は,侵襲的で,弁膜症に合併した冠動脈疾患の有無を診断する目的で行われることが多いが,系統的に行われる種々の圧測定には重要な価値がある.肺動脈楔入圧の上昇,特にv波の増高は息切れ症状と密接に関連し,血行動態の点から重症度を推定できる.左室造影は左房サイズなどの影響で重症度を的確に反映しない場合があるが,参考となる.非侵襲的検査の結果が合致しない時にはこれら侵襲的検査による血行動態・重症度の評価が推奨される(推奨クラスIIa).

なお,心臓CTは僧帽弁輪石灰化の診断に役立つ可能性がある.現在のところ,有効性や精度に関する明らかなデータはない.

一次性MRに対する各種検査の推奨度を表11に示す.

3.3 外科治療

僧帽弁形成術では自己の僧帽弁構造が一体として温存されるため,人工弁置換術に比して,長期間の抗凝固療法やその他の人工弁に関連した合併症(血栓塞栓症,抗