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p.21 抽出テキスト

イパス術[CABG]と弁手術を含む)では,CFS 5以上のフレイルが13% 含まれ,術後6ヵ月死亡と主要合併症の発生率は,フレイルなし(スケール2以下)で5.6%と15.8%,プレフレイル(スケール3と4)で8.6%と32.3%,そして,フレイルあり(スケール5以上)で16.7%と50.0%という結果であり,フレイルと心臓手術アウトカムの関連が示唆された133).

TAVI施行の 374人とSAVR施行の 646人の計1,020人において,CHS基準,CFS,EFTを含む複数のフレイル評価とアウトカムを検討した研究(年齢中央値82歳)では,フレイルが死亡や機能障害の危険因子であること,複数のフレイル評価方法のなかでEFTが30日死亡率,1年死亡率の最も強い予測因子であったことが示された132).

おのおの異なるフレイル評価方法を用いた6つの研究のシステマティックレビュー(TAVIを含む心臓手術症例4,756人)では,すべての研究において,フレイルと死亡や合併症などの不良なアウトカムとの有意な関連が示されていた.その関連は高齢者ほど強いことも示唆された134).

6.3 高齢者に対する治療方針の特殊性

高齢者においては,年齢や併存疾患だけでなく,フレイル評価が治療成績の予測に不可欠である.高齢者は,若年者と異なり余命が短いため,長期成績は不明だが短期成績は良好であることが示されている新しい低侵襲治療は,高齢者にとって有益であることが多い.しかし,概してそのような治療は高額であり,余命の短い高齢者においては費用対効果を考慮した治療選択も重要である.また,しばしば弁膜症以外の疾患を併発していることも高齢者の特徴である.その場合,どの疾患が予後を規定するか,予後規定疾患に介入できるのかを検討し,複数疾患に介入するのであれば優先順位をつけることが必要である.単純に高齢であることだけを理由に必要な侵襲的治療を躊躇するべきではない.同時に緩和治療という選択肢も忘れるべきではない.高齢者に対する治療方針については患者ごとにフレイルや認知機能,併存疾患,余命規定因子,そして患者自身の意思などを詳細に評価したうえで,ハートチーム(弁膜症チーム)において十分な議論を重ねるべきである.

7 弁膜症チームでの議論の重要性に ついて

いかに優秀な心臓専門医であっても,時に弁膜症の治療選択に迷うことがある.特に無症候性の重症弁膜症や

手術リスクが高い患者には経カテーテル治療を含めた治療選択において難しい判断が必要になることがある.自身の専門に偏った判断に陥る危険性もある.

そのような複雑な重症弁膜症患者の治療適応決定は,循環器内科医と心臓外科医で構成される弁膜症チームで行われるべきである.疾患によっては循環器内科医,インターベンション専門医,心臓イメージング専門医,心臓外科医,麻酔医,看護師,ソノグラファー,放射線科医師/技師を含む広義の弁膜症チームが必要になる.弁膜症チームの役割は,さまざまな治療方法におけるリスクとベネフィットを考慮したうえで,専門性に偏らない,最適な治療方法を決定することである.たとえば高齢のAS患者に対する手術適応,あるいはTAVIかSAVRかの治療法選択では,重症度,年齢,フレイル,認知機能,併存疾患などから考えられる手術リスク,治療効果,予後などを弁膜症チームで協議し,その結果を患者とその家族に対し十分説明をすることが求められる.

弁膜症チームは複数の分野から,専門知識をもった経験豊富なバランスのとれたメンバーで構成され,ガイドラインを基本に,十分な協議の下に治療方針を決定する.専門性の高い内科治療,経カテーテル治療,外科治療などを,時期を逸することなく提供することが必要である.また,症例を集積し,全国規模でのデータベースを作ることは,治療効果やそれに伴うリスクの,統計学的評価を可能にする.これらの情報は今後の治療方針の決定に有用であり,良質な医療の提供につながるため,診療結果を日本心臓血管外科手術データベース(Japan Cardiovascular Surgery Database: JCVSD)などに登録することも重要な仕事である.さらに,弁膜症チームの中で,心臓外科医やインターベンション専門医,心臓イメージング専門医養成のための体系的なトレーニングプログラムをもっていることが望ましい.

なお,一般的には「ハートチーム」という言葉が使用されることが多いが,「ハートチーム」という言葉は,冠動脈疾患領域でCABGとカテーテルインターベンションの選択を心臓外科医・循環器内科医で議論するべきところから生まれたものである.弁膜症に関しては,弁膜症の重症度や弁の形態,手術の適応や術式の選択まで含めて議論を行い,上述のごとく複数の分野から,専門知識をもった経験豊富なバランスのとれたメンバーで集まって議論することがより重要である.このことから,本ガイドラインでは,欧米のガイドラインにおける “Heart Valve Team” と同様,弁膜症の知識と経験をもった専門家集団という意味で,「弁膜症チーム」とした.