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p.20 抽出テキスト

5.2.6 ステロイド内服例

易感染性,創傷治癒不全,消化管潰瘍,高血糖,急性副腎不全に注意する115).術前のステロイド内服量は,原疾患のコントロールが維持されることを前提に,可能な範囲で減量することが望ましい.術後早期から内服再開が困難な症例ではステロイドカバーを行う.

5.2.7 抗凝固薬内服例

抗凝固薬は術前に中止する116-118).ワルファリンは術前3~5日までに中止し,必要に応じてヘパリンへの置換を考慮する.特に血栓塞栓症のリスクが高い症例(機械弁,脳梗塞の既往,CHA2DS2-VASc score 2点以上)では置換を前提に術前管理することが望ましい1, 119, 120).ヘパリンの投与量は活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が正常対照値の1.5~2.5倍に延長するように調整するが,出血には注意が必要である.ヘパリンは手術の4~6時間前に中止する.なお,緊急手術など早急にPT-INRを是正する必要がある場合は,ビタミンKや第IX 因子複合体製剤,新鮮凍結血漿を投与する.ダビガトランは,クレアチニンクリアランスが50 mL/分以上であれば1~2日間,30~49 mL/分であれば2~4日間投与を中止する.中止12時間後から必要に応じてヘパリン置換を行う.アピキサバンは手術の48時間以上前に,エドキサバンは24時間前には中止して,ヘパリン置換を考慮する.リバーロキサバンは手術の24時間以上前には休薬する.

5.2.8 透析例

感染症,低心拍出量症候群,そして,肺合併症が3大死因であり121),感染コントロール,緩徐な除水,リハビリテーションを含む呼吸管理が重要である.重篤な合併症の1つに非閉塞性腸管虚血があり122-124),血管収縮剤であるノルエピネフリンの投与量には注意を要する123, 124).

6 高齢者への対応

近年の健康意識,生活習慣の改善,さらには医療水準の向上に伴い,わが国の平均寿命はますます延びている. 2017年の厚生労働省統計によると,女性は87.26歳,男性は81.09歳であり125),男女共に世界トップレベルである.また,2016年発表による健康寿命は女性74.79歳,男性72.14歳であり,こちらも年々延びている.健康寿命の延伸に伴い,高齢者に対する治療選択が変化している.高齢者を単に年齢で一括りにするのではなく,フレイル

や認知機能等の評価が必要である.

6.1 フレイルの評価

日本老年医学会によると,フレイルとは,「高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し,生活機能障害,要介護状態,死亡などの転帰に陥りやすい状態で,筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず,認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題,独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念」とされている126).この定義にもあるように,フレイルには身体的要因,精神的要因,社会的要因があるとされているが,実臨床では身体的要因の評価に偏っていることが多い.

フレイルの評価方法についてはさまざまな方法が提唱されており,現在のところ統一された方法はない127, 128).ほとんどの評価方法は次の2 つに分類される.ひとつはFriedら129)によるCardiovascular Health Study Index(CHS基準)に代表される「表現型モデル」である.CHS基準では,「歩行速度低下,握力低下,意図しない体重減少,アンケートによる身体的活動度低下,疲労感」のうち3つ以上該当するとフレイルと判定している.もうひとつはRookwoodら130)によるFrailty Index(FI)に代表される「障害蓄積モデル」である.FIでは,70ものさまざまな障害指標(身体所見,症状,異常検査結果など)を加算してスコア化する.これは死亡との高い相関が示されているが131),煩雑で実臨床では使いづらいという欠点がある.Afilaloらが提唱したEssential Frailty Toolset(EFT)は,下肢筋力低下,認知機能低下,貧血,低アルブミン血症の4項目のみを評価し,ポイントを加算していくフレイル指標である132).

のちにRockwoodらは,より実臨床で使いやすいClinical Frailty Scale(CFS)を提唱した84).CFS(図4)は,表現型でも障害蓄積モデルでもなく,臨床的判断に基づきフレイルを半定量的に評価する方法である.CFSはFIと相関すること,死亡と相関することが示されており85),その簡易性から循環器領域の実臨床で用いられることが多い.

6.2 心臓手術における術前フレイルとアウト カム

開心術施行の137人において,術前CFSと術後アウトカムの関連を検討した研究(年齢中央値78歳,冠動脈バ