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p.18 抽出テキスト

管危険因子を有する患者に対して推奨する(推奨クラスI).また,中等症以上の機能性MRで虚血の関与が疑われる患者に対して推奨される(推奨クラスIIa) 3).

わが国では,2013年よりTAVIが,2018年には経皮的僧帽弁接合不全修復術が保険適用となり,今後これらの手技は施行件数が増加していくと考えられる.高齢者を含む手術高リスク患者が適応となるこれらの治療においては,事前の心臓カテーテル検査により得られる情報はより重要となる可能性もあるが,同時に検査の必要性を慎重に判断する必要がある.

5 リスク評価

5.1 JapanSCOREと総合評価

開心術前のリスク評価は,「手術のクオリティコントロール(心臓外科手術の質の改善と患者のための医療安全)」という意味で重要である77).手術死亡率の予測は,既存のリスクカリキュレータを用いて簡便に計算できるようになっている78-80).代表的なリスクカリキュレータは,JapanSCORE 78), EuroSCORE II 79),STS score 80)である.経カテーテル弁膜症治療前のリスク評価は慣例的に海外のリスクカリキュレータ79, 80)で行われているが,わが国の臨床データによって作成されたJapanSCOREでの評価も行うべきである77, 81-83).JapanSCORE 2では,30日手術死亡率に加えて7つの主要合併症の発生率も予測できるので,周術期管理においても有益である.主要合併症には脳卒中,出血再開胸,新規透析導入,縦隔炎,24時間以上の人工呼吸器管理,消化管合併症,長期ICU滞在(8日間以上)が含まれている. JapanSCORE 2はアプリ化され,スマートフォン経由で簡便に取得・利用できる.カリキュレータへの入力情報は多岐にわたるが,フレイル(6. 高齢者への対応 を参照のこと),手技的難易度,アプローチ(たとえば右小開胸)が解析に含まれていないことに注意を要する.この点に関して2014年のACC/AHAガイドラインでは「総合的リスク評価」が提唱され,予測死亡率に加えて,フレイル,主要臓器障害,そして手技的難易度を考慮した評価法が推奨されている1).図4 84, 85)に本ガイドラインの「外科手術適応のための総合的リスク評価」を示した.実際のリスク評価で大切なことは「弁膜症チーム内で個々の患者さんを多角的に総合的に評価する」ことである.フレイルや認知機能の評価方法に絶対的なものはないことも知っておく必要がある. 5.2 併存疾患,抗凝固薬・ステロイド内服例 における注意点

5.2.1 認知機能障害合併例

超高齢社会の到来により認知機能障害を有する症例に対する開心術も経験されるようになってきている.術前認知機能障害の存在は術後せん妄のリスクである86-88).開心術後のせん妄の発症率は10~20%以上であり89-91),50%を超えるという報告もある90).せん妄は術後死亡率を上昇させ91, 92),入院期間を延長し86),術後有害心イベントの発生リスクを高めることが報告されている89).したがって,術前に認知機能を評価し,術後せん妄の予防に努めることは,高齢者手術の質向上という点できわめて重要である.手術時間の短縮,早期リハビリテーション,疼痛管理,良質な睡眠の確保がせん妄予防において重要である89, 93).

5.2.2 糖尿病合併例

縦隔炎などの創部感染に注意が必要である.周術期は低血糖を避け,血糖値を140~180 mg/dLで管理することが望ましい94).HbA1c値の測定がリスク評価に有用であり,7.0%以上では縦隔炎のリスクが高まる95).

5.2.3 肝硬変合併例

手術侵襲が致命的な肝不全を招くことがあり,手術適応は慎重に判断する.ICG 15分停滞率 25%以上,Child- Pugh分類 B群・C群96-98),MELD(Model for End-stage Liver Disease)Score 13以上98-100),コリンエステラーゼ低値例101)の治療成績は不良である.

5.2.4 血液疾患合併例

血小板数や凝固因子の低下に伴う周術期出血,感染症に注意が必要である.出血対策として,特発性血小板減少性紫斑病ではγグロブリン製剤102),血友病Bでは第IX因子製剤103)の投与が行われる.γグロブリン使用時は血栓塞栓症や急性腎不全などの副作用に注意する.

5.2.5 悪性腫瘍合併例

体外循環の使用による免疫能の変化と腫瘍の進行,癌細胞播種が懸念されてきたが104-107),現時点では積極的に支持する報告はない108-110).したがって,開心術は禁忌ではなく,余命や全身状態を考慮した上で,総合的に判断すべきである.血液腫瘍合併例では術後出血や感染症の発生率が23~57%と高い108, 111-114).