p.16 抽出テキスト
3 その他の非侵襲的画像診断 3.1 負荷試験 弁膜症患者では,重症度と臨床症状や臨床所見が合致しないことがある.負荷試験を行う意義は,このような症例の治療介入の必要性を明らかにすることである.負荷方法には運動負荷と薬物負荷があるが,労作に伴う症状および血行動態変化を観察できる運動負荷試験が好ましい46-48).運動負荷時の所見とともに,心機能および血行動態の評価が可能な負荷心エコー図検査の有用性に関するエビデンスが蓄積されてきている49-56).運動負荷心エコー図検査には,運動負荷中の心エコー図の記録ができる臥位エルゴメーターを使用した手法が望ましい.薬物負荷心エコー図検査は,後述のごとく,おもに左室収縮不全を伴った低流量低圧較差ASに使用される57-60).負荷心エコー図検査では,心室機能,狭窄弁での圧較差および逆流,肺動脈収縮期血圧を含む心臓血行動態,および心室容積などのさまざまな指標を評価できる.しかし,記録可能な指標をすべて負荷中に評価することは困難であり,個々の症例の診断に必要な指標の記録を優先すべきである46-48).表6に 弁膜症に対する負荷心エコー図検査の推奨とエビデンスレベルを示す. ASでは,無症候性重症ASに対して,無症状であることの確認,運動時の血行動態反応の評価,またはその後の心事故のリスク層別化を目的とした運動負荷心エコー図検査が推奨される(推奨クラスIIa) 3, 32, 49-52).また,左室収縮不全を伴った低流量低圧較差ASでは,真の重症AS (true severe AS)と偽性重症AS(pseudo severe AS)との鑑別,および収縮予備能の確認を目的として,低容量ドブタミン負荷心エコー図検査が推奨される57-60). MRでは,重症だが無症状の慢性一次性MR,および有症状にも関わらず安静時心エコー図所見では重症弁膜症とは診断されないMRに対して負荷試験が推奨される(推奨クラスIIa) 53, 61, 62).二次性MRはダイナミックに変化するため,病態の把握および予後推定のために運動負荷心エコー図検査は有用である63)。しかし,治療方針の決定においては,いまだエビデンスが不十分であり,これまで前向きに行われた研究はRIME試験のみである64)。この研究結果に基づき,CABGを行う症例では,中等症のMRへの手術介入を決定するために,運動負荷試験による症状の出現,MRおよび肺高血圧の増悪について術前に評価することを推奨する。 運動負荷心エコー図検査では,負荷時の肺高血圧(≧ 表6弁膜症に対する負荷心エコー図検査の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル MR慢性一次性MR重症だが無症状の症例,または症状を有するもMR が重症とは診断されない中等症症例において,運動負荷時の症状の有無,収縮期肺動脈圧の変化,および左室機能の変化を評価する目的で行う運動負荷心エコー図検査IIa C 二次性MR重症だが無症状の症例,または症状を有するもMR が重症とは診断されない中等症症例において,症状,労作誘発性MR の重症度,および収縮期肺動脈圧の上昇を評価し,病態把握および僧帽弁手術の適応を検討する目的での運動負荷心エコー図検査IIa C MS安静時のドプラ心エコー所見と臨床症状との間に乖離がある場合,僧帽弁mPG および肺動脈圧の反応を評価する目的で行う運動負荷心エコー図検査IIa C AS無症候性重症AS無症状であることの確認,運動時の血行動態反応の評価,またはその後の心事故のリスク層別化を目的として行う運動負荷心エコー図検査IIa B LVEF<50%の低流量低圧較差AS 1)真の重症AS と偽性重症AS との鑑別,および2)収縮予備能の確認を目的として行う低容量ドブタミン負荷心エコー図検査IIa B AR重症度と症状が乖離する場合の血行動態・左室収縮予備能の評価を目的として行う運動負荷心エコー図検査IIb C