p.13 抽出テキスト
1.2 身体所見 身体所見は弁膜症の診断と重症度の評価のために詳細に行う必要がある6).心雑音を聴取した場合,時相,最強点,強さ,ピッチないし性状,呼吸の影響について検討する.各弁膜症にはそれぞれ特徴的な聴診所見があるが,心雑音の時相を最も厳密に検討すべきである.一方,心不全の症例では重症弁膜症でも,心雑音の強度が低い場合がある.また,視診・触診を併せて行うことは弁膜症の評価に有用である.視診では,心不全の評価に有用な頸静脈の観察と分析が重要である.触診では心尖拍動の位置や性状,頸動脈拍動の評価が弁膜症の診断に有用である. 1.3 生化学指標 血中の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値が弁膜症の重症度評価や予後予測に有用であるとの報告がある7, 8).特に無症候性弁膜症において治療介入の決定に有用である可能性がある3, 9-11).しかし,治療方針を決定する至適なカットオフ値は明らかになっていない3). 2 心エコー図検査(表4・5) 断層法ならびにドプラ法を用いた経胸壁心エコー図検査(TTE)は,弁膜症の確定診断,血行動態評価,そして治療方針の決定に必須の検査法であり,弁膜症が既知または弁膜症が疑われる全例に施行されるべきである(推奨クラスI) 12-31).評価項目として,弁膜症の機序,逆流・狭窄の定性ならびに定量的評価,心腔の大きさ,心機能,そして血行動態評価を含んだ総合的な検査を行うことが推奨される.無症候性弁膜症では,定期的な心エコー図 検査のフォローアップが推奨される(推奨クラス I).重症度に合わせたフォローアップの頻度の目安を表5 に示す32). TTEでの評価が不十分な場合や,さらに精査が必要な場合,経食道心エコー図検査(TEE)による評価が推奨される(推奨クラス I) 3, 32-34).僧帽弁や左心房の観察には特に有用である.各弁膜症における推奨に関しては各論で述べる. 2.1 逆流の評価 弁逆流は,弁尖穿孔や逸脱など弁装置の構造変化を伴った器質的弁逆流(一次性逆流)と,弁装置そのものには器質的変化がないものの心室や心房のリモデリングによる構造変化によって生じる機能性逆流(二次性逆流)の2 つに分類される.逆流の機序ならびに重症度の評価法は,心エコー図検査が第一選択であり,断層法,パルスドプラ法,連続波ドプラ法,ならびにカラードプラ法を用いて総合的に行う.逆流の機序ならびに重症度の解釈 表4 弁膜症の診療における心エコー図検査の推奨とエビ デンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 弁膜症が既知または疑われる症例の初期評価におけるTTE I B弁膜症症例で,症状または身体所見になんらかの変化が認められる症例に対するTTE I C無症候性弁膜症症例に対する定期的なTTE I C TTE での評価が不十分な場合や,さらに精査が必要な場合のTEE I B 表 5 無症候性弁膜症患者に対する心エコー図検査のフォローアップの頻度の目安 弁膜症の種類 AS AR MS MR 軽症3~5年ごと3~5年ごと3~5年ごと3~5年ごと中等症1~2年ごと1~2年ごと1~2年ごと1~2年ごと重症6~12ヵ月ごと6~12ヵ月ごと左室拡大症例は,より頻回1年ごと6~12ヵ月ごと左室拡大症例は,より頻回