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加し,逆流は減少する.一方,慢性逆流症例では左室拡大や拡張期左室コンプライアンス増加のため,前負荷は維持すべきである.観血的カテーテルや心エコー図を用いて,中心静脈圧,肺動脈圧および左室サイズや機能をモニタリングするべきである3).

無症候性重症AR・無症候性重症MRは,左室機能が保たれていれば非心臓手術を安全に行うことが可能である.有症状または低左心機能症例では弁膜症手術を考慮すべきであるが,内科治療で心不全がコントロールされていれば,非心臓手術に先行して弁膜症手術を必要とすることはほとんどない.左室機能障害が高度(LVEF<30%)の場合,心不全に対して最適な内科治療を行なった後,非心臓手術が特に必要な場合に限り行うべきである.

5 IEの予防

日本循環器学会によるIEの予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版) 857)があるのでここでは要点のみを示す.

人工弁や弁形成術のための人工物(人工弁輪など)を心内に有する例は,IEに罹患するリスクが高く858, 859),これにはTAVIやホモグラフト(同種移植弁)も含まれる.これらが高リスク群となる.逆流を伴わないMSではIEのリスクは低いが,ほとんどの後天性弁膜症は中等度リスク群に含まれる.したがって,弁膜症および人工弁置換術後症例に関して,手技前の予防的抗菌薬投与は行うべきと考えられる.過去にIEの既往を有する症例は既往のない例に比し明らかにIEの罹患リスクが高いため高リスク群になる860, 861).

予防的抗菌薬投与を行うことが強く推奨される手技には,歯石除去を含む観血的歯科処置(抜歯など)と扁桃・アデノイド摘出,ペースメーカーや植え込み型除細動器の植込み手術などがある857).膿瘍ドレナージや経尿道的前立腺切除術などでも予防的投与が推奨される.しかし気管支鏡・喉頭鏡検査,気管内挿管(経鼻・経口)鼓室穿孔

チューブ挿入術,TEE,食道・胃・十二指腸内視鏡検査(生検やポリープ切除を含む),尿道カテーテル挿入,経尿道的内視鏡(膀胱尿道鏡・腎盂尿道鏡),中心静脈カテーテル挿入には予防的抗菌薬投与は推奨されない.食道静脈瘤硬化療法や食道狭窄拡張術,大腸内視鏡による粘膜生検やポリープ切除術,胆道手術.尿道拡張術,経腟分娩や治療的流産などや,心臓カテーテル検査や経皮的血管内カテーテル治療,手術に伴う皮膚切開(特にアトピー皮膚炎症例)は,菌血症をきたす可能性があるため,高リスク群である人工弁置換後症例やIEの既往のある症例には予防的抗菌薬投与を行うことが推奨される.

弁膜症患者,特に人工弁置換術後患者には,IEに関する教育を十分に行うことが重要である.

6 リウマチ熱の予防

リウマチ熱は弁膜症の重要な原因であり,リウマチ性心疾患の予防は,急性リウマチ熱の一次予防に他ならない.

A群溶連菌の検出キットの発達により早期発見が可能となり,A群溶連菌扁桃炎に対する抗菌薬治療の早期開始が一次予防の鍵となる862).リウマチ性心疾患の患者では,繰り返すリウマチ熱により増悪することが知られており,リウマチ熱に対する長期間にわたる二次予防が推奨される.A群溶連菌感染は再発する際にかならずしも症状があるとは限らず,症状が治まった後でもリウマチ熱が再発することがある.リウマチ熱の二次予防はわれわれが考えている以上に長期間の抗菌剤投与や急性A群溶連菌扁桃炎に対する治療が必要である.すでに弁膜症,特にMS患者では二次予防が重要であり,リウマチ熱の予防は10年間または40歳になるまでの,どちらか長い期間行う必要がある(表54).弁膜症の重症度やA群溶連菌感染から考えて高リスクな患者においては一生涯にわたる予防も考慮すべきである863, 864).

表54 リウマチ熱に対する二次予防の期間

タイプ最後の罹患からの期間

心筋炎および残存心疾患(弁膜症*)を伴うリウマチ熱10年間または40歳になるまでの期間のうち,長いほうの期間心筋炎を伴うが残存心疾患(弁膜症*)がないリウマチ熱10年間または21歳になるまでの期間のうち,長いほうの期間心筋炎を伴わないリウマチ熱5年間または21歳になるまでの期間のうち,長いほうの期間* 弁膜症は臨床所見または心エコーで確認されていること(Gerber MA, et al. 2009 862) より抜粋)