GL検索 v0.1.0
画像は 104 ページを描画したものです
page 104

p.104 抽出テキスト

膜症チーム内で十分に検討し,Maze手術の適応を決定する.僧帽弁手術と同時にMaze手術を行うことが,長期生存率を改善するかどうかについては,研究によって結果が異なり,議論の残るところである787-791).

1.2.3 大動脈弁手術時のMaze手術の適応(表52)

僧帽弁手術にくらべて大動脈弁手術時のMaze手術を対象とした研究は少ない.単施設における2 つの観察研究では,AVRと同時にMaze手術を行った群は,Maze手術なしの群よりも洞調律率が有意に高く,死亡率や合併症率は変わらなかったという結果であった792, 793).僧帽弁手術における場合と同様に,左房サイズが洞調律化不成功の予測因子であることが示されており794, 795),大動脈弁手術症例においては僧帽弁手術症例より左房が大きくない症例が多いことが,少なくとも僧帽弁手術時と同等の洞調律化効果がある理由かもしれない795).以上より,大動脈弁手術時に慢性/持続性心房細動に対してMaze手術を考慮する(推奨クラスIIa).長期生存に対する効果は僧帽弁手術同様に明らかではない.

1.2.4 弁膜症手術時の左心耳閉鎖・切除術の適応(表52)

非弁膜症性心房細動に対する左心耳閉鎖は,抗凝固療法と同等の塞栓症予防効果であり,出血イベントや死亡は抗凝固療法よりも少ないことが示されている796).ただし,弁膜症手術における外科的左心耳閉鎖・切除術の効果を評価した大規模ランダム化比較試験はない.観察研究において,外科的左心耳閉鎖・切除術が,術後塞栓症イベント抑制に関与しているという報告もあれば,否定的な結果を示す研究もある797-799).心房細動を伴う症例で弁膜症手術時に左心耳閉鎖または切除術を考慮する(推奨クラスIIa). 2 冠動脈疾患合併弁膜症

2.1 概説

心疾患患者の高齢化に伴い,冠動脈疾患を合併する弁膜症患者は増加している.日本胸部外科学会の学術調査800-803)によると,弁膜症手術例におけるCABG同時手術は,1999年9.7%,2009年には19.8%と増加している.近年に入りその割合は横ばいであるが,弁膜症手術件数の増加に伴い,CABG同時手術件数は今後も増加していくことが予想される.

近年,TAVIは急速に増加しており,さらに経皮的僧帽弁接合不全修復術も開始された現在,これら弁膜症に対するカテーテル治療とPCIとの併用も増加していくことが予想される804).今後,患者の社会的,臨床的背景もさらに複雑になっていると考えられ,個々の症例について,それぞれの病態の評価と治療法の選択がより重要になってくるものと思われる.

2.2 弁膜症手術時の冠動脈血行再建の適応

わが国における心臓手術成績は年々向上しており,全弁膜症手術の死亡率は2.1%,待機的CABGは0.9%ときわめて良好である175).同時手術では大動脈遮断時間,体外循環時間が延長するが,周術期管理,特に術中の心筋保護法が進歩した現在では,低心機能例でなければ大きな問題にはならない.

冠動脈疾患を合併する弁膜症の中ではASと虚血性MRが多い.虚血性MRについては,前項(第2章 4.二次性MR: 左室収縮機能低下に伴うMR)にあるため,ここでは大動脈弁膜症について記載する.

2.2.1 大動脈弁手術とCABGの同時手術について

SAVRの適応症例が,有意な冠動脈疾患を合併している場合は,CABGをあわせて施行する(推奨クラスI). SAVRで,合併する冠動脈疾患を放置した場合の術後早期および遠隔期成績は,同時手術を施行した場合より不良であることが知られている805-808).同時手術としての冠動脈血行再建が不完全であると術後左室機能に悪影響をもたらすことも報告されており,有意狭窄を有する冠動脈は可能な限りすべて血行再建の対象とすることが推奨される809, 810).

表52 Maze 手術・左心耳閉鎖/切除の適応に対する推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

僧帽弁手術時における慢性/ 持続性心房細動に対するMaze 手術IIa B僧帽弁手術時における発作性心房細動に対するMaze 手術または肺静脈隔離術IIb C大動脈弁手術時における慢性/ 持続性心房細動に対するMaze 手術IIa C弁膜症手術時における心房細動を伴う症例に対する左心耳閉鎖または切除術IIa C