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p.100 抽出テキスト

1 僧帽弁形成術

1.1 術後の評価とフォローアップ

僧帽弁形成術後の評価には心エコー図検査が用いられる.評価の際は術前の心機能と病変の部位および病態,それに加えられた手術手技とその時期を理解して行う.

1.1.1 手術室でのTEE

大動脈遮断解除後,循環動態が安定した後に評価を行う.軽度でも残存逆流を認める例では,完全に逆流の制御された例と比較して,再手術率が高いと報告されている171) ことから,逆流は完全に制御されることが望ましい.再度心停止として修復をする指標としてカラードプラ法で描出された残存逆流ジェット最大面積≧2 cm 2 があるが756),ジェット面積は血圧やエコー装置の設定などの影響を受けることに注意が必要である.縮流部幅≧3 mmは中等症以上の逆流33)を示し,再修復の指標となる757).軽症を超える逆流がある場合や,軽症以下の逆流であっても,流速の速い逆流ジェットが人工弁輪に強く当たるなど,溶血の原因となる可能性が高い場合,MSが疑われる場合(左房–左室mPG≧7 mmHgまたは 最大圧較差≧17 mmHgが指標758))は再度心停止として再形成もしくはMVRを考慮する.収縮期の前尖の前方移動(SAM)は左室流出路の狭窄とMRの原因となる.左室の容量負荷,陽性変力作用薬の減量,中止,β遮断薬の開始などを行いSAMの消失を図るが,効果のない場合は再度心停止として修復を行う196).

1.1.2 術後のフォローアップ

TTEでは心機能の変化と逆流の再発や狭窄の有無を観察する.形成術後の逆流再発や形成術に伴う合併症は手術手技によるものと弁尖自体の要因によるものに分けられる193, 759).手術手技によるものとしては弁尖や弁輪の縫

合の離開,人工腱索のトラブル,SAM,不完全修復などがあげられ,弁尖自体に関連するものとしては弁変性の進行,IE,弁尖の硬化などが挙げられる.手術手技に関連する逆流再発や溶血は,ほとんどが術後1~2年以内に出現し,その後減少するが,弁尖に関連するものは1~2年を過ぎたのちでも一定の頻度でみられるという傾向にある180, 193, 759-761).よって,TTEによる観察は退院時,退院後1~3ヵ月,その後6ヵ月間隔で実施し,2年を過ぎたのちは,症状の出現がなく,エコー図所見にも変化がなければ2~3年に一度とする.残存逆流のあるものや, MSの疑いのある場合は引き続き症状および聴診所見を確認しながら年に一度のTTEで経過を観察する.経過観察の頻度に明確な基準はなく,上述の頻度は目安である.検査の間隔は必要に応じて調節を行う.

1.2 再手術の適応

重症の逆流がみられる場合,溶血の所見があり貧血の進行がみられる場合,重症MSを認める場合は再手術の適応となる.中等症以上であるが重症には満たない逆流の場合でも,労作時の息切れなど症状のみられる場合や,経時的に左室,左房の拡大が見られる場合,肺高血圧の進行,心房細動の出現をみる場合は逆流を過小評価している可能性があり,慎重に評価を行い,再手術の適応を考慮する.TTEのみでは逆流や狭窄の成因を明らかにできない症例ではTEEを施行し詳細な評価を行う.症状と心エコー図所見に乖離があり,手術適応の判断が困難な場合,運動負荷心エコー図検査を施行して症状や肺動脈圧の変化を観察することは治療方針の決定に有用である.機能性MRに対する形成術後など,左心機能の著明に低下した症例についての再手術の適応については弁膜症チームで相談をして方針を決定する.

第12章 弁形成術後