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p.10 抽出テキスト

改訂にあたって

弁膜症に関するガイドラインは,「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン」として,2002年に初版,2007年に改訂版が刊行され,さらに2012年に一部改訂版が刊行されている.しかし,弁膜症の診断・治療に関してここ数年の進歩はめざましく,米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)ガイドラインは2014年に改訂版1), 2017年に一部アップデート版が作成され2),同様に欧州心臓病学会(ESC)/欧州心臓胸部外科学会(EACTS)ガイドラインも2012年に引き続き,2017年にも改訂版が作成された3).

2013年10月にカテーテルによる大動脈弁留置術が導入され,さらに2018年4月からは僧帽弁閉鎖不全症/僧帽弁逆流症(MR)に対してもカテーテル治療が導入されるに至り,これらのカテーテル治療の成績が,最近相次いで発表されている.生体弁置換術後の弁機能不全に対して, valve-in-valveも2018年7月より保険適用となった.外科治療に関しても,より低侵襲な手術の普及,大動脈弁閉鎖不全症/大動脈弁逆流症(AR)や基部拡大例に対する形成術の普及,人工弁の改良による人工弁選択の変化など,この数年でめざましい進歩がみられている.また,低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症(AS)の病態や予後,心房細動に伴ってみられるMRの概念,今まであまり注目されてこなかった三尖弁閉鎖不全症/三尖弁逆流症(TR)の病態などに対する新しい知見も得られるようになった.左室機能低下に合併する弁膜症に関しては,心不全治療を同時に行うことが必須であり,その心不全治療においても,さまざまな進歩がみられている.

このように,弁膜症に関する治療法はより選択肢が増え,それに伴い,カテーテル治療を含めた手術の適応やその時期に関しても,それぞれの症例に応じた対処が必要となった.今まで以上に,チーム内で深く議論した上で治療方針を決定することが必要となり,今さらながらではあるが,「ハートチーム・弁膜症チーム」の重要性が強調されるようになった.

多様化する治療のなか,今回のガイドラインでは,診断や薬物治療も含めて弁膜症における診療全体に言及するとの意味から,「弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン」から「弁膜症治療のガイドライン」と名称を変え,

内容も前回のものから大きく全面改訂するに至った.

本ガイドラインは,日本循環器学会,日本胸部外科学会,日本血管外科学会,日本心臓血管外科学会の合同作成で,参加学会については,従来の日本心臓病学会に加えて,日本心エコー図学会,日本心血管インターベンション治療学会,日本心臓弁膜症学会,日本低侵襲心臓手術学会にも参加いただき,多方面からの意見を取り入れて作成した.弁膜症の治療に関しては,ランダム化比較試験がきわめて少なく,手術の適応や時期に関する推奨もエビデンスレベルは高くない.近年,少しずつ日本人のデータも報告されてきているが,日本発のエビデンスの蓄積はまだ限定的である.特に手術時期の決定に際し重要な指標となる左室径に関しては,主に欧米患者のデータに基づくエビデンスによる基準が用いられてきたため,比較的体格の小さな日本人に当てはめる場合は体表面積(BSA)補正値の必要性なども考慮する必要がある.今回のガイドラインでは,今までの観察研究から得られてきた多くの知見と臨床経験をもとに,実際の臨床現場での診療と最新のデータをともに反映させる形で,現時点での診療指針を作成した.

さらに,従来のガイドラインに採用されているが実際にどの程度のエビデンスがあるのか疑問が残る項目や,いまだ議論が残る項目を,クリニカルクエスチョン(CQ)として取り上げ,エビデンスの収集法とその軽重評価に客観性をもたせてその回答を作成すべく,文献検索には日本図書館協会にご協力をいただいた.

弁膜症の新しい治療法が今後も次々と導入され,それに伴い多くのエビデンスが発信されることが予想される.本ガイドラインは,最新のデータでもその信憑性を判断しながら取り入れ,従来のエビデンスと合わせて,現時点で最も妥当と思われる診療指針を作成したものと理解していただきたい.

近年,臨床的に重要度が増してきている弁膜症に対し,このガイドラインの改訂版が臨床現場で適切に,また広く用いられ,わが国の循環器診療の発展に貢献できれば幸いである.なお,本ガイドラインは診断や治療方針決