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ているので1169),上行大動脈の性状が悪い場合には同所グラフトと複合グラフトで末梢吻合を行う必要がある. 3.2 完全内視鏡下冠動脈バイパス術, 覚醒下OPCAB 低侵襲CABGの究極の形である完全内視鏡下冠動脈バイパス術(TECAB)には,手術支援ロボットda Vinci Surgical Systemが使用されているが1170, 1171),人工心肺を使用しないで行うためには特殊な吻合器具が必要不可欠である.人工心肺を用いたTECABは比較的容易と考えられるが,人工心肺を使用しない利点が消える. 覚醒下OPCABは高位硬膜外麻酔を使用する自発呼吸完全覚醒下の胸骨正中切開によるOPCABである1172, 1173).挿管全身麻酔を避けることにより早期の離床,退院が可能である.また,心拍数が減少し冠血流が増加する結果,不整脈の発生が抑制され,吻合が容易とされる. 4 心筋再生 重症心不全の最も重要な治療法である心臓移植は,きわめて深刻なドナー不足の状況であり,新しい移植法案が可決されたものの,欧米レベルの汎用性の高い治療法としての普及には困難が予想される.一方,左室補助人工心臓(LVAD)については,本邦では移植待機期間が長期であるため,感染症や脳血栓などの合併症が成績に大きく影響している.このような状況を克服するため,世界的に再生医療への期待が高まっているが,重症心不全を治癒させるまでに至らず,心臓移植やLVADを基盤とした重症心不全治療をサポートするような新しい治療法の開発が急務である. このような現状のなか,重症心不全においては細胞移植,組織移植,また再生医療的手法を用いた再生創薬の研究が行われ,臨床応用が進んでいる. 4.1 自己筋芽細胞シートの概要 筋芽細胞シート移植は重症心不全に対する細胞治療の一種で,6×10 7個の筋芽細胞からなるシート(図10)を5枚,左側方開胸にて,左室前壁から側壁に広範囲に,心外膜に移植する治療である.大腿の内側広筋から5~10 g程度の骨格筋を採取して筋芽細胞を抽出,培養し,所定の細胞数がそろったら冷凍保存する.手術日が決定したら細胞を解凍し,温度応答性培養皿にて,筋芽細胞シートを作成し,移植する. 移植した筋芽細胞シートが移植後虚血状態になり, HIF-1遺伝子が発現し,これに誘発されて肝細胞増殖因子(HGF),血管内皮増殖因子(VEGF),塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF),ストローマ細胞由来因子1(SDF-1)などのサイトカインが分泌され,これらサイトカインの血管新生,幹細胞誘導,線維化抑制などの作用による心機能の改善が期待される.移植された筋芽細胞シートは数ヵ月で消失するが,移植後1ヵ月以内に新生血管が構築され,また分泌されたSDF-1により骨髄間葉系幹細胞が移植部位に誘導され,同細胞がさらに血管新生を促し,新生血管の構成細胞になりうることが基礎研究で明らかにされている1174). 細胞培養室にてクリーンな状況下で細胞を培養するため, HIVや肝炎などのウイルスに感染している患者には禁忌である.これまでの心不全モデル動物を用いた基礎研究にて,心機能の改善,生命予後の延長効果が認められている. 4.2 筋芽細胞シートの有効性 これまでLVADを装着した拡張型心筋症患者4例に自己筋芽細胞シートが移植され,2例で心機能の改善が確認され,この2例は人工心臓から離脱している1175).また,虚血性心筋症において,臨床研究1176),多施設企業治験1177)を経て,同治療法の安全性と有効性が確認され,同治療法は早期承認制度の下,心不全に対する世界初の再生医療等製品「ハートシート」として保険承認された.今後,本格承認を得るため60例の虚血性心筋症患者に移植すると同時に,対照群を設定し,最終的に有効性の推定が検証された後,本格承認を得る予定である. 図10 心筋再生に用いる自己筋芽細胞 シート