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p.93 抽出テキスト

第12章 適切性基準の概念と

Standardized PCI

1 適切性基準

大規模RCTなどのデータに基づいて提示される診療ガイドラインの「推奨」は,永らくEBMの根幹をなすものとされてきた.しかし,一般的に診療ガイドラインの推奨でカバーできる症例は全体の20~30%にすぎないともいわれており,診療現場での運用の限界について早い時期から指摘を受けてきた.そこで近年考え出されたのが,本ガイドライン第4章の3. 1「治療方針決定の要因」(P. 26)でも言及している「適切性基準」(AUC)である.

一般的に診療ガイドラインにおける推奨は,エビデンスのレベルに応じて強弱がつくが,AUCではより実践的に病変部や虚血,さらに投薬内容などの項目を組み合せ, Delphi法により意見の収束が図られたシナリオに限定した個別の推奨を行う.このAUCは,特にCOURAGE試験の発表以降,再灌流療法の適応を決定するにあたっての実務的なツールとして存在感を増しており,各施設の医療チームが日常の診療の現場での判断を振り返るため,積極的に用いられている1121).

米国における再灌流療法のAUCは2009年に初版が発表され,2012年に最初の改訂,2017年に2度目の改訂がなされている170, 1122–1124).こうしたAUCを,実臨床の場から抽出されてきたレジストリーデータなどに適用することも行われており,緊急時においてはほぼ適切な適応のもとでPCIが施行されていることが知られている.一方で,待機的なPCIの10%程度が「不適切」な適応に該当すると考えられ(米国),さらにアップデートされた2012年版のAUCの適用では25%以上が不適切な適応に該当するとの報告もある1125, 1126).

本邦においても待機的なPCIに関しては同様の報告がなされ,2009年の基準では15%,2012年の基準では30%ものPCIが不適切であると判定された.ただし,米国のAUCでは術前検査として負荷検査のみを想定しており,本邦で広く行われている冠動脈CTは術前検査と認識されていない.またFFRに関しても,使用が想定された臨床シ

ナリオが限定されており,これらのモダリティを用いて評価された症例に関しては,その適応が評価できないという問題点があるとの指摘もなされた1127, 1128).その点で,2017年に改訂された最新版のAUCでは,多くの臨床シナリオに対して造影CTやFFRの使用が考慮されており,本邦においても受け入れやすい内容となっている.

また,左冠動脈前下行枝(LAD)近位部を含まず虚血の程度も低リスクの症例に対しても,日米両国の考え方の隔たりが顕著である1129).米国ではこうした症例に対して薬物治療を優先させることが明記されているが,本邦ではJ-SAP試験の結果をもって,薬物治療とPCIのいずれもが第一選択の治療法と認識されている1130, 1131).そのため,本邦では低リスク症例に対してPCIが多く施行される傾向にある.

AUCの普及と実践は,米国においては不適切なPCIの割合が半分に減少し,待機的PCIの症例数も全米で30%減少するという多大な影響を及ぼした1132).米国のAUCをそのまま本邦に適用することは難しいが,本邦においてもPCIの過剰施行が存在することは事実であり,引き続き手術手技の適正化に向けてこうした形での自発的努力を示していくことは必要であろうと考えられる.

2 Standardized PCI

表69 Standardized PCI に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

全国成績を尺度とし,PCI,CABG の質と成績を管理する. I C学会自らデータベースを構築し,質の管理に関与する. I C自施設の成績を各施設にフィードバックする. I C