p.87 抽出テキスト
2 CABG 2.1 抗凝固薬 表65 CABG 施行時の抗凝固薬の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 術前心房細動や塞栓症の既往など術前より認める抗凝固薬の適応例に対し,術後出血リスクがなくなった時点で未分画ヘパリン/ 低分子ヘパリンおよび経口抗凝固薬の投与開始I C術後の心房細動が12 時間以上継続する例への未分画ヘパリン/ 低分子ヘパリンおよび経口抗凝固薬の投与開始I B抗凝固薬の適応がない場合の,CABG/ OPCAB(オフポンプ)術後のグラフト開存率向上を目的とした抗凝固薬投与III A 抗凝固薬は,心房細動など他の抗凝固薬の適応がなければ,CABG術後の内服薬として推奨されない.CABG術後患者へのワルファリンのルーチン投与の効果を評価したRCTにおいて,術後出血のリスクが有意に高いことが示された.しかし,同時に静脈グラフト開存率のワルファリンによる改善効果については,結果が分かれた1037–1039).これらを含むメタ解析では,ワルファリン単独でもグラフト開存率が有意に改善されること,効果はアスピリンと同程度であることが報告された1040).しかしながら,出血リスクが少ない点でアスピリンのほうが優れているため,グラフト開存を目的としたCABG術後の第一選択薬としてアスピリンが選ばれてきた. アスピリンへのワルファリンの追加投与の効果を調べたRCT(Post CABG試験)では,1351例をアスピリン+ワルファリンとアスピリン+プラセボの2群に分け,グラフト開存率に有意な影響がないことが示され1041),これによりアスピリンへのワルファリン追加投与は推奨されていない.このPost CABG試験では平均PT-INRが1.4とワルファリンが低用量であり,PT-INR 1.6~2.6 あるいは2.0以上といった使用でのワルファリンの効果は不明なままである.心筋梗塞後のアスピリン+ワルファリン対アスピリン単独の比較においてPT-INR 2.0以上のワルファリン追加投与群で脳梗塞,心筋梗塞ともに有意に発症率が低かったという報告もあり,アスピリン+ワルファリンの併用療法には研究の余地が残されている1042). DOACのCABG術後における効果を検討するRCTはまだ少なく,今後待たれる. 術後心房細動に対しては脳梗塞予防のため抗凝固薬の投与が望ましい1043).発症の何時間後からヘパリンや経口抗凝固薬を開始すべきかについてはエビデンスが乏しい.症例ごとに異なる出血リスクと塞栓症リスクを考えて投与開始が決められるが,12~48時間後に開始されることが多い. 2.2 抗血小板薬 表66 CABG 施行時の抗血小板薬の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル CABG/OPCAB 術後48 時間以内にアスピリン(81~162 mg/ 日)の内服を開始I A急性冠症候群患者に対するCABG/ OPCAB の術後のDAPT I A労作性狭心症に対するOPCAB 術後における静脈グラフト開存率の改善を目的とするDAPT IIa B CABG/OPCAB 術前の待機患者に対しアスピリン内服を継続または開始IIa C術後のグラフト開存を含む予後改善を目的として,術前からアスピリンに加えて他の抗血小板薬を併用III B 多数の報告から,CABG術後のアスピリン内服は多岐にわたって有益である1044–1047).静脈グラフト開存率の改善, CABG術後の生存率改善,術後イベント発生率低下の報告から,アスピリンの生涯内服が薦められている.407例を対象とするRCTにおいて,アスピリン+ジピリダモール内服により非内服に比べて静脈グラフトの1年開存率が改善されることが報告された(89%対77%) 1047).これに対し て,内胸動脈グラフトでは元々の開存率自体が高いので,開存率に対するアスピリンの効果はないと報告されている1048).しかし,アスピリン内服により生存率が68%,心筋梗塞発症率が48%改善されることも報告されており1049),自己冠動脈病変への効果も含めて,CABG術後の二次予防目的としてアスピリンは必須となっている. アスピリンの内服開始時期に関しても多数の報告がある.術前からの内服により周術期の合併症や死亡が減少したと報告されており,CABG/OPCABの術前からのアスピリン内服が薦められている1050).術後は3日以上経って内服開始した場合はグラフト開存率が改善されないことが報