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p.82 抽出テキスト

第8章 造影剤腎症

1 診断

造影剤腎症(CIN)は「ヨード造影剤投与後72時間以内に血清クレアチニン(SCr)値が前値よリ0.5 mg/dL以上または25%以上増加した場合」996) に診断されるが,急性腎障害の診断基準(KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury) 997, 998) を用いることもある.留意点としては,1造影前にできるだけ直近のSCr値を用いて腎機能を評価すること,2検査前の腎機能評価はeGFRで行うが,造影剤腎症の診断はSCr値の変化で評価することが挙げられる.

2 リスク評価

CABGまたはPCI後のCIN発症に関する複数のリスク評価指標が報告されているが,十分な検証がされているわけではない999).したがって,絶対リスクとしてではなく相対的なリスク評価にとどめておくのが妥当である.表58に日本腎臓学会ほかによる「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018」に記載されているCINの危険因子を抜粋した1000).

CINの原因として造影剤の浸透圧がしばしば議論になるが,等浸透圧造影剤と低浸透圧造影剤でCINの発症率に差はみられていない.また,低浸透圧造影剤どうしの間における相違もない.なお,経動脈投与は経静脈投与と比較してCIN発症率が高い傾向にあると報告されている.

PCI自体が慢性腎臓病(CKD)の予後を悪化させるというエビデンスはないが,造影剤の投与量は必要最少限とすることが推奨される.また,短期間に反復してPCI手技を行うことは推奨されない. 3 予防法

CINを発症した患者では心血管イベント発生率が高いことが報告されており,CINの予防はPCIにおいて必須の重要事項であるが,エビデンスがあり推奨される方法は輸液のみである1001, 1002).

待機的PCIの症例では,生理食塩液を造影開始6時間前から1 mL/kg/hで輸液し,造影終了後は1 mL/kg/hで6~ 12時間輸液する.輸液時間が限られる場合には炭酸水素ナトリウム液の投与も推奨されている.緊急症例では炭酸水素ナトリウム液を造影開始1時間前から3 mL/kg/hで輸液し,造影終了後は1 mL/kg/hで6時間輸液する.飲水のみによる水分補給は推奨されず,輸液による十分な対策を講じることが推奨される.

N-アセチルシステイン,h-ANP,アスコルビン酸,スタチンなどさまざまな薬物治療の報告があるが,CINを予防するという十分なエビデンスはなく,推奨されない.

血液透析がしばしば施行されているが,有効性は明らかではなく,施行すべきではない1003, 1004).

4 発症後の治療

CIN発症後の治療としてループ利尿薬,低用量ドパミン, hANPの有効性は実証されていない.また,輸液療法は有効循環血漿量の低下がみられない場合は推奨されない.血液浄化療法は乏尿を伴うような全身状態不良の患者には推奨されるが,腎機能改善を目的とした使用には推奨されていない.

なお,詳細は日本腎臓学会・日本医学放射線学会・日本循環器学会により編集された「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン2018」1000) を参照のこと.