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しかし,これらの比較で常に対照群となっているのは,未だにステント血栓症も最も少なく,臨床成績においてこれに優るものはないといわれているEESである.そのEESと同等の成績を第1世代のBRSが達成するのは困難であったともいえる. BRSのメリットは完全に溶出する5年後以降に現れるはずで,そのデータがまだ乏しい現状であるが,ABSORBコホートBの72ヵ月後のマルチスライスCTによるデータでは内腔の拡大も認められており916),今後5年を超える長期成績がでてくると期待感が変化してくる可能性もある. 8.3 デバイス血栓症予防のための留置法 BRSは強度を保つためにステントストラットが厚いが,構造破損を防ぐため過拡張は禁止であり,(金属ステントと比較すると)放射支持力が強くないなどの構造上の問題があり,金属ステントにおいても血栓症のリスクを高めるとされる不十分拡張となりやすい.血栓症を減らしてBRSの成績を向上させるにはこれらを理解したうえでの留置技術が必要であるが,こういった技術的な問題で解決する血栓症は主として早期血栓症で917),問題となっているのは1年から4年で生じる超遅発性の血栓症である.その原因として,ストラットの不完全密着(malapposition)が残存した症例で,溶出とともにストラットが折れて落ち込んでくることや918, 919),新規の冠動脈瘤が形成されることが想定されている920). 血栓症のなかでもとくに早期血栓症の原因として,金属ステントと同様にエッジの解離,拡張不足などの技術的問題のほかに,脱水や急性冠症候群で血栓量が多いなど患者・病変側の状況,抗血小板薬の作用不足など,多くの因子が絡んでくる.特に留置のテクニックとして,PSP(predilatation:十分な前拡張,sizing:適切なサイズ選択, post-dilatation:高圧での後拡張)に留意することが必要といわれている.後ろ向きの解析ではあるが,PSPを達成した症例ではイベントが少ないことが示されている921).これまでの臨床試験からわかっているのは,小血管に不適切に大きなBRSが留置されると,ストラットの表面積の割合(footprint)とストラットの突出量が多くなり,最小血管内径が小さくなることで,特に参照血管径2.25 mm未満の小血管は血栓症のリスクが高いとされている.またストラットが血管壁にどれだけ埋め込まれるか(embedment)が早期の新生内膜での被覆と血流の乱流を防ぐ面で重要である.本邦の治験データではそのembedmentの深さは平均50 μm程度で,金属ステントの80 μm程度とは差があり,ストラットが血管内腔にかなり突出した状態となる922).石灰化病変ではそのembedmentが十分にとれず,不完全 密着,ひいては血栓症のリスクを高める可能性が示唆されている923).これを少しでも回避するためにはPSPが重要である. 抗血小板薬の作用不足は積極的に介入できる部分である.初期の効果発現に時間がかかったりバラツキがあったりするクロピドグレルではなく,プラスグレルやチカグレロルなど新規のADP受容体拮抗薬が,作用不足の心配も少なく適している可能性があるが,未だエビデンスはなく,スキャフォールド血栓症の発症後にクロピドグレルからチカグレロルに切り換えたという症例報告924)のみである. 1年後に新生内膜で被覆されていれば,それ以降に血栓症が発症することはないはずであるが,1年後以降の超遅発性血栓症の報告が相次ぎ,問題となっている.原因がこれ1つのみとはいえないが,DAPTを2剤とも中止して発症している例が多い915, 925, 926).ロッテルダムのB-SEARCH試験で超遅発性血栓症症例のリストをみると,術直後の不完全密着例が目立つ927).少なくとも留置直後にストラットの密着がうまくいかなかった症例については,3~4年の長期DAPTが必要と考えられる.また,アスピリンとプラスグレルのDAPT継続中にもかかわらず発症している例も報告されており919),ストラットが崩れてきて発症する例(光干渉断層法OCTでのscaffold discontinuity)では, DAPTの効果だけで予防できるとは限らない.こういった症例を見かけた場合は金属ステントでのカバーを必要とする可能性がある. したがって,超遅発性血栓症を防いで良好な長期予後を目指すためには,術直後に確実な密着が得られるように,適切な病変選択と留置テクニックが最も重要である.すなわち超遅発性血栓症予防の観点でも,PSPが重要と考えられる.