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p.71 抽出テキスト

4 ベアメタルステント

バルーンによる拡張術の機序に基づく限界をクリアするため,冠動脈内腔を支えてリコイルを抑制する手段として,冠動脈ステントの開発が進められた.ベアメタルステント(BMS)の歴史はSigwartやSerruysらによるWallstent TMによって幕を開け,特にバルーンによる拡張後の冠動脈解離による急性冠閉塞の回避に効果を発揮した854–856).その後1994年にはSerruysらにより,Palmaz-Schatzステントを用いた世界で初めてのRCTであるBENESTENT試験が施行された858).対象は安定狭心症の516例で,慢性期の心イベント,脳血管障害はバルーン群の76例(30%)に対しステント群では52例(20%)と有意に低率で(P=0.017),また定量的冠動脈造影で評価した再狭窄もバルーン群の32%に対しステント群では22%と有意に低率であった(P<0.05) 858).バルーンに対するステントの優位性はこのBENESTENT試験により確立された858).

安定冠動脈疾患に対するBMS留置後のDAPTは最低1ヵ月とされており,何らかの理由で1ヵ月後以降の抗血小板薬併用が不可能と判断される症例に対してBMSを選択することは合理的といえる.しかし,手術などのためDAPTを中止しなければならない状況であっても,あるいは出血リスクが高い患者に対しDAPT期間1ヵ月でRCTを行っても,BMSに新世代の薬剤溶出性ステント(DES)を上回るメリットが1つもないことが示されており454, 875–878), 2018年のESC/EACTSのガイドライン139)では新世代DESをすべての状況で推奨している.このため,BMSは新世代のDESの出現以降,臨床の場で使用される機会はきわめて少なくなっている.

5 薬剤溶出性ステント

表49 薬剤溶出性ステント(DES)の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

すべてのPCI においてDES を第1 選択とする. I A

PCI後の再狭窄率は,BMSにより20~30%程度までに低下したが,依然としてPCIのアキレス腱であることに変

わりはなかった857, 858).再狭窄を克服することによってPCIの中心となったのが薬剤溶出性ステント(DES)である859).内膜増殖を抑制する薬剤の局所投与によって慢性期の再狭窄が大幅に低減され,再血行再建率が劇的に低下した.

5.1 第1世代

世界で初めて臨床応用されたDESは,イースター島の土壌から発見された免疫抑制薬であるシロリムスを用いたシロリムス溶出性ステント(SES)であった879).

ヒトでの最初の(the first in men: FIM)DES留置の臨床試験では,6ヵ月後の再狭窄は0%で,3年後に30例中1例に遅発性再狭窄を認めたのみであった859).Serruysらは238例を対象とした多施設共同研究RAVEL試験で,6ヵ月後の再狭窄率0%,1年後のMACE発生率5.8%と驚異的な成績を報告した880).同時期にSESを用いたさらに大規模なSIRIUS試験が米国で,安定狭心症あるは不安定狭心症患者1058例を対象として行われ,SESの圧倒的な優位性が示された(P<0.001) 881).

これらの結果を背景に本邦では2004年からSESの使用が可能となった.SESの発売後,免疫抑制薬のみでなく,細胞増殖抑制作用のあるパクリタキセルにも注目が集まり,パクリタキセルを生体親和性の高いポリマーに染み込ませてコーティングしたパクリタキセル溶出性ステント(PES)が開発された.PESは本邦でも2007年から使用可能となった882).

しかしDESは,その優れた再狭窄抑制効果とは裏腹に,超遅発性ステント血栓症(VLST)など,DES特有の問題があることが明らかとなった.その発生率は,Rotterdamからの報告では年に0.6%程度,本邦におけるSES留置5078例の7年間の追跡では1.43%であった883, 884).VLSTの原因として,ステント表面の再内皮化の遅延,不完全な内皮形成,ステントポリマーに対する炎症の関与などが示唆されているが,正確な機序は不明である885–887).また,現実的な問題として,10年前に第1世代のDESであるSES,PESを植え込んだ患者はきわめて多いので,VLSTの発生率は低いとはいえ,過去の事象としてではなく,今日においてもVLSTの可能性は常に念頭におくべきである.

5.2 第2世代,第3世代

第1世代の問題点を解決すべく,新世代DESでは薬剤を徐放するポリマーに生体適合性の改良が加えられ,ステントの材質や厚みとともに安全性が大きく向上した.新世