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10 手術成績の登録

冠動脈血行再建の手術成績登録は海外では古くから欧米を中心に普及していた.

本邦では全国規模のデータベース構築が遅れたため,当初は施設別に登録を行い,海外のリスク計算式の妥当性を検討するのみであった848).全国的には日本胸部外科学会がアンケート形式で全国の90%以上の施設から手術症例と手術死亡例を収集し,全国統一のデータとして毎年報告してきた458).この報告は1986年から行われ,本邦の心臓血管外科手術の統計としてきわめて重要な意味をもつ.一方で,術前情報を持ち合わせていないため,症例の重症度が考慮されない粗死亡率が得られるのみである.CABGの登録数は2003年頃をピークとして,ここ数年は減少傾向にある.

日本冠動脈外科学会は2002年から,冠動脈手術に特化してより詳細な全国アンケート調査を行い,冠動脈外科手術を施行している約300の施設からの回答をまとめており,回収率は約6割である.その結果は同学会のウェブサイトで公開されている849).全例登録には至っていないが,本邦の冠動脈手術に関する詳細を知るうえで貴重な情報といえる.2017年の調査によると,OPCABの割合は64%,死亡率は単独CABGで1.52%,初回の待機的CABGで0.81%,人工心肺への移行(conversion)を除いた初回の待機的OPCABでは0.61%であった849).

欧米での全国規模のデータベースの存在に加えて,心臓外科領域での医療事故が社会問題となったことも背景となり,本邦でも心臓血管外科領域における術前重症度を加味した全国データベース設立の気運が高まった.そして2000年に日本心臓血管外科手術データベース(JCVSD)がスタートし,CABG手術成績登録も開始された.参加施設は当初5施設であったが,その後徐々に増加していった.

日米の国家規模のデータベースからはその膨大な情報を基に年次報告も行われている.2018年の米国STSの報告によると,2016年には156,931例のCABGが登録され,手術死亡率(30日死亡+院内死亡)が2.2%で,OPCABの割合は約13%であった850).本邦ではJCVSDから2年まとめて(2013~2014年)の報告が2018年になされており,この2年間でCABGは約32,000件,全体の手術死亡率は3.0%, OPCABの割合は55%であった851, 852).手術死亡率は範囲を待機的CABGに限ると2.0%,さらに待機的OPCABに絞ると1.1%となる.日本冠動脈外科学会のアンケート調査ではこれよりも良い数値が掲げられているが,データ収集の悉皆性,正確性を考慮すると,JCVSD報告のほうが事実により近いと推察される.

CABGの手術成績登録は,外科医として侵襲的治療を遂行する際に自らの成績を客観的に評価するために,必要不可欠のものである.これは外科医のみならず内科医にも通じるものであり,内科・外科のみならず医療の全ての領域で質の高い成績登録システムが構築されることを望むものである.