p.65 抽出テキスト
イントはOPCABとONCABで差を認めなかった815). SMART試験816) は1人の経験豊富なOPCAB外科医が行ったRCTで,OPCAB群とONCAB群とで1年後の生存率とグラフト開存率に差がなかった.遠隔期平均7.5年でもグラフト開存率に差はなかった.生存率に関しては3年から5年でOPCAB群で高くなるが,7年に向けてやや差が小さくなるという結果であった817). 本邦からも経験豊富な外科医の参加によるRCT(JOCRI試験818))が施行され,早期成績が検討された.それによると手術死亡,術後合併症に差は認められなかった.グラフト開存率についても差がなかった. これらの前向き試験の結果から,経験豊富な外科医によって施行されたOPCABの成績は,術後5年前後までではONCABのそれと同等であるといえる. 8.2 OPCABのvolume-outcome relationship Benedetto ら819) は米国のデータベースNationwide Inpatient Sampleを用いて,外科医の年間症例数あるいは施設の年間症例数が手術成績にどう影響するかを, OPCABとONCABとで比較した.2枝以上のCABG患者において,年間29例未満の施設,年間19例未満の外科医によるOPCABは,ONCABに比較して手術死亡率が高かった.逆に年間164例以上行っている施設,年間64例以上を行っている術者では,OPCABで手術死亡率がより低いことを示した. 8.3 OPCABの優位性 8.3.1 高リスク群での成績 Puskasらの報告では820),STSスコアでの予測死亡率が2.5%以上であれば,OPCABの実際の死亡率は予測死亡率を下回り,予測死亡率が高いほどこの傾向は顕著であった.STSデータベースを用いた大規模レジストリーでも同様のことが証明され821),また最近のRCTのメタ解析で822),OPCABでの手術死亡,心筋梗塞,脳梗塞の発生率は,リスクプロファイルが高くなるほど著明に低下することが示された. 8.3.2 大動脈ノータッチの影響 大動脈中枢吻合法別のOPCAB,ONCABを比較したメタ解析660) によると,大動脈ノータッチOPCABが脳梗塞,総死亡,腎不全,出血,心房細動,ICU滞在を減少させるのに最も効果的であった.本邦の心臓血管外科データベー スを用いた検討では757),OPCABにおける吻合デバイス使用とサイドクランプ施行とが比較され,早期成績には差を認めなかったが,サイドクランプ群で一過性の神経学的異常が多かった. 8.3.3 腎機能への影響 STSデータベースを使用した傾向スコアマッチング分析では,術前腎機能低下例ではOPCABで術後院内死亡や血液透析施行の発生率が低下した823).この傾向は術前腎機能がより大きく低下している例でより顕著であった.本邦の心臓血管外科データベースを用いた検討でも,eGFR(糸球体濾過量)が30 mL/min/1.73m 2を下回る症例では新規の血液透析への移行がOPCAB群で有意に少なかった824). 8.4 脳梗塞の発症 RCTのメタ解析ではOPCABは脳梗塞の発症率を低下させた825). 9 術中グラフト評価 9.1 術中蛍光イメージング 表45 術中蛍光イメージング(IFI)の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル インドシアニングリーン(ICG)を用いたIFI によるCABG 術中のグラフト開存性評価IIa B 9.1.1 準定量的造影法としての利点 近赤外線照射装置と併用して用いられるインドシアニングリーン(ICG)は,1955年にKodak研究所によって開発され,1956年から臨床で使用されている.さまざまな外科領域でICGを用いた造影による手術の論文が報告された826). 心臓血管外科においては2002年に,ICGを用いた術中蛍光イメージング(IFI)が初めて報告されている827).その後Taggart,Reuchebuch,Takahashi,Balacumaraswamiらが次々とIFIによるグラフト評価について報告してい