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p.64 抽出テキスト

あっても生じる,シーケンシャル吻合ならではのグラフト障害がある.

グラフトの全長にわたる開存のためには,グラフト末梢端で吻合されている標的冠動脈まで,十分な順行性の血流を確保する必要がある.グラフト自体の抵抗を最小限とするために,グラフトをできるだけ最短の経路となるように吻合位置と角度を調整するが,ダイヤモンド吻合を適切に使用することにより,最終的にグラフト末梢端の吻合までの開存が得られやすくなる573).また,同所ITAもしくは同所ITAを流入路とするシーケンシャル吻合では,グラフトの末梢端で吻合される標的冠動脈の狭窄度が中等度であると,順行性の血流が得られる確率が下がるため,狭窄度がおおむね90%以上の枝をグラフト末梢端の標的冠動脈枝とすることが望ましい659, 809).適切な狭窄度の枝がない例では,別のグラフト形態も考慮するべきである.流入路を上行大動脈とするグラフトでは,血流予備能が豊富で内腔圧が高く,特に静脈グラフトは狭窄度の影響を受けにくいため,標的枝の狭窄度が中等度であっても問題なく適用することができる.

7.2.2 複合グラフト (同所動脈グラフトとフリーグラフトの組合せ)

上行大動脈の石灰化が著明な症例では大動脈への手術操作を避けるべきである.多枝バイパスの適応であれば,より完全な血行再建と脳合併症回避の両立を目指すうえで,複合グラフトは有用な選択肢となりうる.一方で,シーケンシャル吻合と同様に,単一のグラフトから複数の冠動脈枝すべてに順行性の血流を確保するためには,適切な症例および標的冠動脈枝の選択が重要である.

特に,Y型(もしくはT型)と呼ばれる側枝をもつ複合グラフトでは,吻合された複数の標的枝の狭窄度などが複雑に関係しているが,複合グラフト両端への順行性の血流のためには,それぞれ高度な狭窄を有する枝と吻合することが必要であり,特にITA-LADバイパスの血流や開存性を阻害しないことが必須の要件となる810).

これまでにグラフト形態について検討したRCTは多くない.Glineurらは,BITAをともに同所グラフトとして使用するグラフト形態と,RITAをフリーグラフトとしてLITAの中腹に側枝としてY型複合グラフトを作製し,LCA領域に吻合するグラフト形態とを比較した結果,複合グラフトではシーケンシャル吻合が容易で,より多くの枝にITAでのバイパスが可能となり,そのため心イベント回避に有効であったと報告している796).MagruderらはBITAを使用したCABGの成績の比較で,グラフトの形態は予後に影響しなかったと報告しているが607),この研究は,個々の症例に対して術者の判断で最善の形態を選択した結果を

比較し,差がなかったというものだが,どのように最適化したかは明らかとなっていない.

今後はグラフトの使用方法の中でも,グラフトの選択だけでなく,個々の症例の特徴に合わせてどのようなルールでグラフト形態を最適化するかといった議論が深まることが期待される.

8 オンポンプ手術とオフポンプ手術

表44 オフポンプ冠動脈バイパス術(OPCAB)の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

経験豊富な術者,施設において施行する. I B

高リスク例に対して行う. I B

大動脈ノータッチ法で行う. I B

8.1 RCTでの手術成績

現在までに多くのRCTによりオフポンプ手術(OPCAB)とオンポンプ手術(ONCAB)が比較されている.

ROOBY試験811) は初めての大規模多施設試験で,死亡,心筋梗塞,再血行再建の複合エンドポイントは30日では差がなかったが,1年ではOPCAB群で高かった.計画していたグラフト本数より実際の本数が少なかった症例はOPCAB群で多く,また1年後のグラフト開存率はOPCAB群で有意に低かった.そして5年でも死亡率はOPCAB群で有意に高かった812).この試験への批判としては, OPCABの術者に経験が少ない外科医が含まれていたこと,比較的若い男性患者がエントリーされていたことが挙げられる.CORONARY試験813)はOPCAB経験豊富な外科医が術者として選ばれたが,OPCAB群とONCAB群とで主要エンドポイント(死亡,心筋梗塞,脳梗塞の複合)は30日,1年,5年のいずれでも同等であった.30日での再血行再建はOPCAB群で多い傾向にあったが,5年では差がなかった814).GOPCABE試験は75歳以上の患者を対象にしたOPCAB経験豊富な外科医による試験であるが, 30日,12ヵ月で死亡,脳梗塞,心筋梗塞の複合エンドポ