p.59 抽出テキスト
危険因子がなく長期予後が期待できる例に対する第3 の動脈グラフトの使用IIb C高度狭窄(90 %以上)を有しrun-offの良好な右冠動脈,回旋枝領域へのskeletonized 右胃大網動脈(GEA)グラフトの使用IIb C適切な位置関係にある複数の高度狭窄枝(90%以上)に対する動脈グラフトを用いた連続バイパスIIb C 7.1 材料の選択 7.1.1 第1の動脈グラフト 左冠動脈前下行枝(LAD)へのバイパスには原則として内胸動脈(ITA)グラフトを用いる.長期開存率はきわめて良好で,大伏在静脈(SV)グラフトとの比較において心イベント回避率が高く,生命予後を改善する494).原則としてこのITA-LADバイパスは同所(in situ)ITAを使用するのが適切である. 7.1.2 第2の動脈グラフト 1990年代までは,片側内胸動脈(SITA)をLADに吻合し,そのほかの対角枝,回旋枝(LCX)や右冠動脈(RCA)の標的枝に対しては,SVグラフトを使用することが標準的な選択であった.両側内胸動脈(BITA)の使用による胸骨創感染の増加などが動脈グラフトの使用を躊躇させる要因の一つであったが,橈骨動脈(RA)に対するCa拮抗薬による攣縮予防の確立や,skeletonization法によるITAや胃大網動脈(GEA)の採取による胸骨血流の維持・保護効果や径の拡大,到達距離の延長により,近年,第1の動脈グラフト(ITA-LAD)に次ぐ第2の動脈グラフトを使用した手術術式のエビデンスが蓄積されてきた. a. 標的枝 第2 の動脈グラフトとして右内胸動脈(RITA),RA, GEAが候補となる.使用方法としては一般的に,左冠動脈(LCA)領域への使用を第一に考慮すべきとされる295, 575, 638, 768, 769).Karangelisらのメタ解析でも第一にLCXを考慮すべきとされている771).これは,動脈グラフトの開存率はRCA領域よりLCA領域で高く772),生命予後への影響が大きいことなどによる.しかし,LAD以外の最大の枝に対するバイパスグラフトとしてRAとSVを比較したRAPCO試験で,回旋枝への使用は70%であった678)ことから,LCXへの使用を第一に考慮しながら,LADの次に重要な枝がRCA枝であると判断されるときには,RCAへの使用も妥当な例が少なくない. b. グラフトの比較と選択 RAをSVと比較したRCTの結果を表41 675–679, 682–684, 773–775)に示す.SVと同様の使用ができる動脈グラフトとしてRAが比較対象となっている.これらを臨床に適用する際には,単純にどちらのグラフトが優れているかだけでなく,どこに吻合され,どのように使用されたかを理解することにより,試験結果の解釈に違いがでてくる.多くのRCTでACバイパスとして使用され,標的はLCX領域が50~70%となっている.RAのグラフト開存率はSVよりおおむね良好で,SVでは自己冠動脈の狭窄度に影響されないのに対し, RAは狭窄度が90%未満であると,閉塞や機能的な閉塞(索状サインstring sign)のリスクが高まる675).また,SVではグラフトの中腹に,RAでは大動脈との吻合部に,狭窄をきたしやすいことを念頭におく必要がある675). 第2 の動脈グラフトとして,RITAをRAと比較したRCTの結果を表42 678, 681, 687, 776–781)に示す.一部の試験でRITAがRCAへ使用されている例も含まれているものの, LCA領域への使用を主体としたものが多い.結果として, RAとRITAとでグラフト開存率に差はなく,RITAには胸骨創感染のリスクがあり,心イベント回避率や生存率などの臨床的な成績ではRAが優位とする結果とRITAが優位とする結果の両方が報告されている.SVと比較するとRITAは,開存性とイベント回避に有効であり,RAとRITAは第2の動脈グラフトとして同等の重要な位置を占めている. c. 両側内胸動脈(BITA) 本来,ITAは動脈硬化への耐性が強く,攣縮や血栓形成もまれである.同じ動脈グラフトでも,RAやGEAよりバイパスグラフトとして優れた血管であることから,BITAの使用による遠隔期成績の向上も期待しうる.しかしながら,2016年に報告されたART試験の結果では,術後5年間の総死亡,心イベント(死亡,心筋梗塞,脳梗塞)回避において,BITAの優位性は示されなかった689, 782)(表43).この理由付けとして,ランダム化後のBITA群からSITA使用への術式変更例が14%あり,SITA群でもRAなどの複数の動脈グラフト使用が22%含まれており,これらが大きなバイアスになっていると考えられた.これらの背景としては,参加施設や参加術者の経験のバラツキが予後に多大な影響を及ぼすことが挙げられる.したがって,ある程度の経験を有する術者により適切に採取され使用されたBITAであれば,SITAと比較して優位性が保たれ,BITAグラフトは好ましいグラフトであると考えてよい. ART試験のサブ解析によると,BITAの採取方法と胸骨創感染の関係については,non-skeletonized法のSITAに