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p.55 抽出テキスト

NT-SVGの臨床成績はSAVE-RITA試験のサブ解析でも報告されており713),NT-SVGの早期開存率は100%,術後1年の開存率も97.4%と,通常採取のSVより有意に高かった.

NT-SVGではシリンジによる拡張を行わないため,血管内皮および静脈壁の破壊,過進展を生じないというメリットがある.通常SVは大動脈に吻合され,静脈が動脈圧に晒されることにより内皮細胞がある程度損失するが,SVをシリンジで過度に伸展することによりSV内の内皮細胞の欠落が有意に大きくなると報告されている714).NT-SVGの病理学的,生理学的利点が多く報告されており715–719), SV周囲のvasa vasorum(脈管のための脈管)の温存による静脈壁への血流維持がグラフトの長期開存率の向上に寄与する可能性もある720–723).

NT-SVGのデメリットとして,採取部位の治癒遅延が懸念されるが,皮膚のスキップ切開やドレーンの使用により,通常採取と比べて創部合併症の発生率に差がないとされている713).皮膚感覚異常に関しても,NT-SVG採取1年後では通常採取法と比べて差がないと報告されている724).現時点で,NT-SVGは長期開存に関してメリットがありそうであるが,特定の施設でのみ使用されており,エビデンスが十分とはいえない.

4.5.3 採取部位による違い

SVは大腿あるいは下腿からの採取が行われているが,開存率はどちらが優れているかについて明確な結論はない.しかし,一般的にSVは下腿部分のほうが大腿部分よりも細いが,SVの太さが開存率に関係するとの報告がある.20年以上にわたってSV遠隔期開存率を評価した検討では,手術時のSVが太いほど閉塞のリスクが高かったと報告されている725).またCASCADE試験のサブ解析726)でも,術後1年のSV内膜肥厚の程度はSV径が太いほど有意に強いと報告されている.

これらを踏まえると,SV採取は細めのグラフトを採取できる下腿からが良いと推測される.

4.5.4 外ステント

最近,SV周囲に金属の外ステント(external stent)を留置することにより,開存率を向上させる試みがなされている727, 728).外ステント留置によるメリットとして,静脈の過拡張の予防,静脈内腔の壁不整の軽減,冠動脈とSVのサイズミスマッチの軽減などが挙げられ,術後1年の血管内エコー法(IVUS)によるグラフト内の内膜肥厚が外ステント留置により抑制されたとの報告もある729, 730).

外ステントのアイデアは50年以上前からあり731),近年になってCABGでSVに臨床応用され始めた.初期の臨床成績はきわめて悪く,術後早期の開存率が0~34%と報告

されていた732–734).その後,ステントの形状や材質の変更により開存率が向上しつつあるものの,まだ満足できる結果が得られているとはいえない.

5 び漫性狭窄病変

5.1 血行再建の意義とon-lay patch grafting

超高齢社会となり動脈硬化性疾患が増加している中で,冠動脈病変もより複雑化する傾向にある.その中には多枝病変,左冠動脈主幹部病変のみならず,末梢病変部がび漫性に狭窄している症例も含まれる.

び漫性狭窄病変は,病変部が長いためステントをいくつも挿入する必要があったり,石灰化が強いためにステント挿入が困難であったりするため,カテーテル治療では難渋することがある.Tsagalouら735)は長い病変に対するステント治療で16.6%の症例に周術期心筋梗塞を認め,6ヵ月以内に19.6%の症例に再狭窄を認めたとしている.Sharpら736)は617例の60 mm以上の長い病変に対しフルメタルジャケット法でステントを挿入したところ,平均38.9ヵ月の経過観察で心臓死3.6%,周術期心筋梗塞9.5%であったが,標的病変再血行再建(TLR)は23.4%と高率であった.また,Shiraiら737)は病変が長ければ長いほどTLR率が高くなると報告している.以上のように,長い病変に対するステント治療では周術期心筋梗塞やTLRが問題となっている.特に左前下行枝(LAD)の長い病変に対するステント治療では多くの側枝を閉塞することが最大の問題となる.

一方,び漫性狭窄病変に対する外科的治療も難渋することが多い.血管性状が不良であるため通常の吻合法では不可能であったり,たとえ末梢に吻合が可能であっても側枝への血行再建が不完全となることがある.しかし,特にLADの不完全血行再建は患者の予後を大きく左右する因子とされている738)ため,できるだけ良好な血流を確保する必要がある.

び漫性狭窄病変に対する手術術式としてon-lay patch grafting法があげられる739–741).これはび漫性に狭窄した病変部を長く切開し,同長に切開したグラフトで吻合する術式である.狭窄部の動脈硬化病変が吻合の外側に排除されることにより完成した血管内腔のほとんどがグラフトの正常内膜で覆われることとなる.また,側枝の内腔も直接確認できるため確実な血行再建が可能である.病変部内