p.54 抽出テキスト
いる675–683).string signとはRAグラフトの全長または長い距離にわたって狭くなるか,または局所的に攣縮が起こる状態で,最大7%の症例にみられたとの報告がある675).最近のRCTにおいてもRAは遠隔期ではSVよりはるかに開存率が高く,ITAとほぼ同等であることが示された684).ただし,RAを用いた吻合を長期に開存させるためには,標的となる冠動脈の中枢狭窄が90%以上である必要がある658, 659, 684).90%以下の中等度の狭窄であれば,血流競合となりやすく,長期開存率はSVとほぼ同等となる684).また,高齢者(75歳または78歳以上)ではRAの優位性が消失するとの報告もあり,年齢もグラフト選択の重要な要素である684, 685). LITA-LADが基本術式であるとすれば,第2の動脈グラフトとしてRITAかRAが選択される.これら2つのグラフトの大規模比較研究は少ないが,開存率に関してはRITAのほうがやや優れるか,またはほぼ同等との報告が多い678, 686–688).ただし縦隔炎の影響が少ないRAの使用は高齢者や糖尿病患者においては有利である684, 689).BITAに加えてのRAの使用に関しては,手術リスクを増加させることなく,糖尿病や性別にかかわらず生命予後を改善するとの報告もあり,考慮するべき選択である690). 4.4.5 グラフトデザイン RAの利点は,複合グラフトで用いることができる点であり,これによりシーケンシャルでの吻合も可能となる.複合グラフトで用いるよりACバイパスで使用したほうが短期,長期の開存率が高いとの報告もあるが,同等との報告もある640, 691–695).シーケンシャルでの吻合は単独吻合より開存率が高いとの報告もあるが,ほぼ同等との報告もある696–698).すなわち,少なくとも流入路を大動脈にしてもITAにしてもそれほど差異はないと考えられる.また吻合数が増えても開存率に変わりはないという報告もあり,完全血行再建をめざす場合は有効なグラフト選択肢・デザイン選択肢となる658, 659, 695–697). 4.5 大伏在静脈 表38 大伏在静脈(SV)グラフトの 推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 創部合併症や感染の減少を目的とした内視鏡的SV グラフト採取IIa A 4.5.1 採取法による違い CABGにおいて大伏在静脈(SV)は今日でも重要なグラフト材料である.SVの採取には切開して採取する方法と内視鏡的に採取する方法があり,最近では静脈周囲に脂肪組織を付けたまま採取する方法(ノータッチ大伏在静脈グラフト:no-touch SVG)も報告されている. 採取方法の違いがCABGの成績を左右する可能性があることが示唆された報告として,PREVENT IV試験のサブ解析がある699).内視鏡採取でのSVを用いることにより,切開採取法に比べてグラフト開存率が有意に低下し,その後の心筋梗塞発症率や遠隔期再血行再建率,そして遠隔期死亡率までもが上昇したと報告された.その後,この臨床試験に対しては,採取する外科医のレベルが一定ではなくバイアスも多いとの批判的な意見もあり,いくつかのRCTや多施設研究などが行われた700–703).最終的には内視鏡採取SVが切開採取と比べて臨床成績で劣っていないとの結論になった.しかし,内視鏡採取には明らかな習熟曲線があり704),慣れていない外科医では過度の牽引,電気メスによる熱傷害,枝の引き抜けなどが生じやすい.また内視鏡採取ではSVの血管内皮傷害が通常よりも強いとの報告705, 706)もある. 一方,内視鏡採取の最大の利点は,患者の美容上の満足度と創部感染の軽減である.いくつかのRCT 707–709)で内視鏡的SV採取により採取部位の感染を軽減しうると報告されている.採取部位感染を生じると明らかに入院期間が延長することは多施設研究でも証明されており710),創部感染による入院延長により病院収益が大きく左右される米国ではSVグラフトを用いたCABGの70%以上で内視鏡採取が行われている155, 707, 709).2014年のESC/EACTSガイドライン139)では内視鏡によるSV採取は創部感染を減少させるとの理由で,クラスIIaに分類されている. 現在のところ内視鏡によるSV採取は,このように創部トラブルの軽減の点でメリットがあるといえるが,長期の開存率などに関してはさらなる検討を要する. 4.5.2 no-touch SVG 切開でのSVグラフト(SVG)採取法の一つとしてnotouch SVG(NT-SVG)が1990年代に提唱され始めた711). NT-SVGとは,SVを周囲の脂肪組織を付けた茎(pedicle)として採取し,シリンジによる拡張も行わない採取方法である. 最近のRCTでは,NT-SVGの術後16年の開存率は83%と,通常採取法のSVよりも有意に高く,比較対象のLITAグラフトの16年開存率88%に匹敵すると報告された712).