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p.53 抽出テキスト

致していない.

冠動脈病変の狭窄度はGEAの開存に影響を与える.これは,GEAは腹部大動脈の第3分枝で,ITAに比べて血圧が10~15 mmHg低いため,冠動脈の狭窄が中等度である場合には,グラフトからの血流と冠動脈からの血流の競合(competitive flow)が起こりやすいためとされている.このとき,GEAのずり応力が低下し,一酸化窒素などの血管拡張因子放出が減少することによりグラフト不全をきたす可能性が指摘されている644, 645).一方で,標的冠動脈の狭窄度が高度であれば血流競合が起こりにくく,良好なグラフト機能とスムーズな内腔が維持され,グラフト開存率が良好であると報告されている624, 636, 646).

GEAはITAとは異なり収縮性に富み,攣縮を起こしやすいという欠点がある.超音波メスを用いたskeletonization法によるGEA採取は,攣縮を軽減し,グラフトの長さをより長く確保でき,大きな血管径を有する部位の吻合を可能にする,安全な方法である647–649).さらにGEAの動脈周囲神経叢を取り除くことにより攣縮を抑制でき,skeletonization法により血管周囲結合組織を除去することで除神経効果を期待できるとの報告がある650).GEAをskeletonization法で採取することにより,血流競合を回避してGEAの長期開存率の向上に寄与する可能性がある634–636, 651).同所GEAについて,複合グラフトの血流源としての成績621, 652–655)やフリーグラフトとして使用した場合の開存性628, 656, 657)については,一致した見解には至っていない.

4.4 橈骨動脈

表37 橈骨動脈(RA)グラフトの推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

左冠動脈前下行枝(LAD)の高度狭窄病変に対するバイパスに,左内胸動脈(LITA)の次のグラフトとしてRA を用いる. IIa B大動脈・冠動脈(AC)に加えてRA の複合グラフトでの使用,およびシーケンシャルでの吻合IIa C RA グラフト使用時の,攣縮予防を目的とした薬物治療IIa B

4.4.1 RAグラフトの用途と利点

橈骨動脈(RA)は多枝疾患の治療において,ITAの使用に次いで第2,第3の動脈グラフトとして使用されることが多く,完全血行再建などの目的で選択される.大動脈・冠

動脈(AC)バイパスや,ITAとの複合で用いることが可能で,手術のバリエーションは広がる658, 659).複合で用いた場合,オフポンプでの手術をより容易にし,大動脈に触らない(大動脈ノータッチ)バイパスが可能となる.大動脈ノータッチ法では脳梗塞の発生率が人工心肺を用いるCABGや大動脈を触るOPCABと比較して有意に低いことがメタ解析により示されており,その他の心臓関連合併症も発生率が低い660).ITAと異なり,採取が縦隔炎を惹起するなどの正中創への影響はない.

RAグラフトに対する理解が深まったことにより,最近は良好な成績が示され,場合によっては第2の動脈グラフトとして用いられることも多くなっている.特に留意すべき点は,遠隔期成績が標的病変の狭窄度に左右されうること,攣縮を予防するための使用前薬物投与が重要であることなどである.

4.4.2 グラフト採取

RAは上腕から走行する腕頭動脈から分岐し(分岐したもう一方は尺骨動脈),橈骨に沿って走行する.採取可能かどうかの判定では,手掌の虚血を防止できることが大切で,アレンテストやドプラ検査を行い,動脈の性状を確認し,また手掌での尺骨動脈との交通を確認する必要がある661–663).皮膚切開は通常,肘から手首まで行う.採取時は外側前腕皮神経と橈骨神経浅枝に注意する必要がある.内視鏡的にRAを採取する方法については,切開して採取する方法と比べて開存率が同等で,術後創部痛や痺れ感などは抑制されたとの報告がある664–668).

4.4.3 薬物治療

薬物治療には,1採取したRAへの薬物投与,2術後の患者への薬物投与がある.RAはITAと異なり,平滑筋が豊富で攣縮が起こりやすいため,RA採取後はすみやかに血管拡張薬に浸す必要がある669–673).よく用いられるのは,塩酸パパべリン溶液,ミルリノン,またはベラパミルとニトログリセリンの混合液(VG solution)であり,文献的にはVG solutionがより有用であるとの報告が多い669–673).周術期の薬物治療はCa拮抗薬を静注で投与し,内服が可能となった時点からCa拮抗薬を長期内服することが多い674).

4.4.4 使用方法と成績

過去の多くのRCTとメタ解析が示すように,RAグラフトの術後開存率は,短期ではRA特有の索状サイン(string sign)を呈する症例があるためSVとほぼ同等であるが,遠隔期ではSVに比べて有意に開存率が高いことが示されて