p.51 抽出テキスト
Hb 9 g/dL 以下7 g/dL 以上の例への赤血球輸血IIa C脳虚血のリスク,高齢,低心機能などを認める例への赤血球輸血IIa C凝固異常を認めない例への,出血量減少を目的とした新鮮凍結血漿の投与III A 術中および術後にどの程度の貧血なら赤血球輸血を行うべきかは,きわめて重要な問題であるが,答えは明確ではない.欧米のガイドラインではヘモグロビン(Hb)6 g/dLが生命維持のための絶対適応で,7 g/dL以下でも合理的とされている527).一般的にHb 6 g/dLは組織への酸素運搬を安全に行える限界レベルであり537, 538),心血管系疾患であるCABG/OPCAB適応例では7 g/dLが最低限必要なレベルだと考えられている539).最近では開心術5243例を対象としたRCTで,Hb 7.5 g/dLでの輸血施行群と9.5 g/dLでの輸血施行群に分けて比較し,両群間で周術期死亡率に有意差はなかったと報告され,7.5 g/dL程度あればそれ以上は必要ないと解釈できる540).一方で日本輸血・細胞治療学会のガイドラインでは心臓外科手術後の至適Hb値として9~10 g/dLが推奨されている541).9~10 g/dL程度のHb高値群では低値群と比較して死亡率が有意に低いという報告が,メタ解析を含めて多数あることがその根拠である542–545). ヘマトクリット値についての報告は少なく,Wuらは65歳以上の急性心筋梗塞入院患者において,ヘマトクリット値30%以下では輸血を行ったほうが行わないよりも死亡率が有意に低いと報告している546). 新鮮凍結血漿の予防的投与は心臓手術後の術後出血量に影響を与えないとの報告が多く,推奨されない547–550). 4 グラフト採取 4.1 左内胸動脈 表34 左内胸動脈(LITA)グラフトの推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル LITA グラフトによる左冠動脈前下行枝(LAD)のバイパスI B LITA グラフトによる回旋枝のバイパスIIa B LITAグラフト採取における,グラフト長,流量の増加を目的としたskeletonization IIa B LITA グラフト採取における,縦隔炎予防を目的としたskeletonization IIa A 左冠動脈前下行枝(LAD)への左内胸動脈(LITA)を用いた血行再建(LITA-LAD)は,静脈グラフトと比較して短期・長期開存を保ち,生存率・心イベント回避率においても優れた成績をもたらす551–560).術後5年以降,静脈グラフトの開存率は低下するが,LITAは90%以上の開存率を保ち551),生存率,心イベント回避率も10年から20年にわたって静脈グラフトより明らかに優れることが報告されている552, 553).本邦においてもLITA-LADの術後10年での良好な成績の報告があり554),LADではLITAを第一とする選択に疑問の余地はない.LADに対して右内胸動脈(RITA)を用いるRITA-LADでもLITA-LAD と同等の成績を示すとの報告もあるが561–563),その他のグラフトでLITAを凌駕するものはなく,LITA-LADはCABGにおけるゴールドスタンダードといえる. LITAをLAD以外に使用した際の成績の報告は少ない561, 564).LITAを用いた1482例の検討で,術後平均79ヵ月でLITA-LADの開存率が97.2%であったのに対し, LITAによる左冠動脈回旋枝(LCX)の開存率は91.0%と低く,LCXへの吻合はLITA閉塞の危険因子であると報告されている561).したがって,LITAをLCXなど,LAD以外へのグラフトとして用いる際は,単独ではなくRITA- LADと併せて用いれば有用であると考えられている564). 近年,LITAの採取法としてのskeletonizationは標準手技として推奨されている139).連続200例の検討で, skeletonized LITAは,長さが4 cm,流量が30%増加し,早期開存率も99.6%ときわめて良好な成績が報告されている565).さらに本法は,従来の有茎(pedicle)法でLITAを採取する方法と比較して縦隔炎の予防に有用であると報告されている566–569).本法で最も懸念されるグラフト損傷や攣縮に関しても,従来の採取法と有意差がないとされ570),特に超音波メス(harmonic scalpel)を用いた採取法の安全性は広く認識されている571, 572).また,skeletonization法で採取したLITAでLCX領域にシーケンシャルバイパス(sequential bypass)を行うことにより有用性を高めることができるとの報告もある573, 574).今後,動脈グラフトの多様化を考慮した場合,シーケンシャルバイパスグラフトの必要性は高まり,skeletonization法によるLITA採取は安全性を担保しつつグラフト長を確保する意味できわめて有