p.50 抽出テキスト
血液希釈を抑制して輸血を最少限に抑えることを目的とした,人工心肺使用時の閉鎖型回路の使用I A人工心肺への移行やバイパス閉塞のリスクを高めない場合での,出血量・輸血量の減少を目的としたオフポンプ冠動脈バイパス術(OPCAB)施行IIa A術後ドレーンからの出血量が多い症例に対する,止血を目的とした呼気終末陽圧(PEEP)の使用IIb B術後ドレーンからの出血量の減少を目的とした,高圧のPEEP の使用III B 回収式自己血輸血システムは術中出血量を減らし使用輸血量を減らすという報告が多数あり,多くの施設で禁忌を除く全てのCABG/オフポンプ手術(OPCAB)症例に対して使用されている508–510).回収式自己血輸血システム使用により炎症反応抑制や脂肪除去が可能で,感染が増えないなど安全性も十分サポートされている511–513). 人工心肺を使用しないOPCABは人工心肺使用下のCABG(オンポンプ手術:ONCAB)に比較して出血が少ないことが報告されており514, 515),グラフト閉塞や人工心肺への移行(conversion)のリスクが低い場合にはOPCABを考慮してもよい. 開放型静脈リザーバーを排してプライミングを最小限にした人工心肺回路(閉鎖型回路)は,通常の人工心肺回路と比較して,血液希釈を抑えて輸血量を減らすこと,血液の空気への接触を減らし炎症反応を抑えることを目的としている.多数のRCTが閉鎖型回路の血液保持に対する有用性を報告しており,広く認められている516–519).とくに宗教的理由などによる輸血拒否例に対する人工心肺使用手術を施行する際には有用となる520, 521). 200 mL/h以上の術後ドレーン出血に対して術後の呼気終末陽圧(PEEP)5~20 cmH2Oが止血に有効であったという1980年代の報告がある522, 523).エビデンスとしては弱いが,PEEPは出血が多い症例では有効かもしれない.これに対して,出血量に関係なく全症例にPEEPをかけることは出血量に影響がなく推奨しないという報告が,前向き研究の中でなされている524–526). 3.2 薬理学的戦略 表32 CABG 施行時の薬物による血液セービングの推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 抗血小板薬2 剤併用療法(DAPT)継続中の場合,術後の出血を防ぐためアスピリン以外の抗血小板薬を中止する. I B術後の出血量の減少を目的としたリジン類似体(トラネキサム酸など)の投与I A術後の出血量の減少を目的としたアプロチニンの投与III A 本邦ではエリスロポエチン製剤の使用が術前自己血貯血を行う場合以外は保険適用外で,術前貧血例や輸血拒否例に海外で推奨されているような,自己血貯血なしでエリスロポエチン製剤+鉄剤を術前投与する使用法は認められていない527).しかし,術前貧血患者対象のメタ解析において,自己血貯血の有無にかかわらずエリスロポエチン+鉄剤の術前投与が術後他家血輸血のリスクを有意に減少させることが報告されている528). OPCABかONCABかを問わず,術前にアスピリンに加えてクロピドグレルを内服すると術後出血量,輸血使用量が増えることが以前より報告されており,推奨されない529, 530).メタ解析の中で術前5日以内に抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を行っていた場合は出血再開胸と死亡が有意に多いこと,周術期の心筋梗塞や主要心血管イベント(MACE)の発生率は変わらないことが報告されている531). アプロチニンは術後止血効果に優れると従来報告されていたが,リジン類似体(トラネキサム酸,アミノカプロン酸)と比較して有意に周術期の死亡率が高いことから使用が薦められなくなった532–535).これに対してリジン類似体は有意な止血効果が認められ,副作用も比較的少ないことから使用が推奨されている535, 536). 3.3 輸血 表33 CABG 施行時の輸血の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル Hb 7 g/dL 以下の例への赤血球輸血I C