p.45 抽出テキスト
6.3 CABG後のグラフト不全 表28 CABG 後のグラフト不全の治療に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 内胸動脈(ITA)グラフトによる再CABG I B左内胸動脈(LITA)による左前下行枝(LAD)バイパスグラフトが開存している症例で左回旋枝(LCX),右冠動脈(RCA)に虚血が存在し,解剖学的にPCI が適切でないと判断される場合の,症状改善を目的とする再CABG IIa B 2004年から2014年までの日本胸部外科学会の調査によれば458),単独冠動脈バイパスに占める再冠動脈バイパス術の割合は1.3~2.4%で,2004年には2.4%であったが2011年1.6%,2014年1.3%と減少傾向にあるようである. 54~62%でオフポンプ冠動脈バイパス術(OPCAB)が行われており,この割合は初回手術とあまり変わらない.30日死亡率は予定手術では2.1~4.5%であったが,緊急手術では9.1~18.5%と,初回手術に比べると比較的高値であった. 米国STSデータベースを用いた報告459)では,2000年~ 2009年の間でCABG再手術の割合は6.0%から3.4%に減少しており,手術死亡率も6.1%から4.6%に改善されていた.しかし,同じ期間の初回CABGの手術死亡率は2.4~ 1.9%であり,手術成績が向上していても再CABGの手術死亡率は依然として初回手術よりも有意に高率である.このように再CABGの手術死亡率は一貫して初回CABGより不良である460).しかし,再手術症例は合併疾患が多く,リスクを調整して初回手術と比較すると初回手術との差は縮まる傾向にあることが示されている459). OPCABが早期成績の改善に有効であったという報告や461),長期成績がOPCABとオンポンプ冠動脈バイパス術(ONCAB)では同等であったという報告がある462).その優劣について依然として結論は得られていないが,米国においてもOPCABの割合は微増の傾向にある. 初回CABG後における再CABGとPCIを比較したランダム化試験によると,早期死亡は再CABGで有意に高かったが,3年までの追跡では両群間で生存率,再血行再建率に有意差を認めていない463).また左内胸動脈(LITA)が開存しておりLCXやRCAに狭窄病変が存在する患者に対して,再CABG,PCI,薬物治療を比較した試験では,1年生存率に差を認めなかった464).すなわち,LITAが開存し ている場合にその他の枝への治療介入は,症状を改善することのみを目的とするべきであって,生存率を改善する効果は示されていない. グラフト選択に関して,LADにはLITAを使用したほうが早期,長期成績ともに向上することが示されている465).また,すでに使用されているITAを使用して吻合個所を変更し,両側内胸動脈(BITA)を使用したグラフトデザインに変更することも報告されている466). 7 心房細動合併例 7.1 PCI PCI施行予定患者が心房細動を合併することはまれではない.その合併率は,欧米の報告によると5~10%で467),本邦のCREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2によると約8%であった.また,CHADS2(Congestive heart failure/LV dysfunction,Hypertension,Age≧75y,Diabetes mellitus,Stroke/TIAの頭文字を取った脳梗塞発症リスクを評価するスコア.合計0~6点)スコア468) 2点以上の割合は約75%に達した469).同研究において心房細動合併例では非合併例に比べて,最長7年の追跡期間における脳卒中のリスクは約2倍,総死亡のリスクは約2倍,大出血のリスクは約1.5倍高かった.また,PCIを施行した急性心筋梗塞患者における心房細動の影響を検討したOACIS研究によると,心房細動の合併率は12%で,心房細動は入院中の死亡とは関連しなかったが,1年後死亡の有意な予測因子であった470).このように心房細動合併例のPCIでは出血リスク,死亡リスクのいずれも高い. 一方,PCI施行直後に新たに心房細動を発症することはまれである.EXCEL試験によると,PCIから平均3日以内の心房細動発症率は0.1%であり,CABG後の心房細動発症率の18%に比べて有意に低率である471). 心房細動合併例にPCIを施行する場合,塞栓症予防のための抗凝固薬と冠動脈イベント(特にステント血栓症)予防のための抗血小板薬の併用が必要となるため,出血リスクが著しく増大する.このため,出血リスクを考慮したPCI手技,薬物治療が求められる(詳細は第9章 周術期の薬物療法の1. 3「抗凝固薬服用例」,P. 85を参照).PCIでは長期のDAPTを要しないDES留置を心掛けるべきであり,出血リスクを考慮して薬物治療,CABGという選択肢