p.44 抽出テキスト
現在用いられている新世代DESにおけるVLSTの発症率は第1世代のDESよりも低く440),結果として短期DAPTへと移行してきている. ステント血栓症の定義は一律でなく,その発症率も低いことから,正確な比較が困難であった.このため,医師,行政およびメーカー合同の学術研究コンソーシアムにより,発症時期と確からしさに基づいてステント血栓症が表27 441) のように分類された. 6.2.2 原因とVLSTの発症率 ステント血栓症の原因は発症時期によって異なる.早期のステント血栓症では拡張不良や抗血小板薬の効果不十分などの関与が大きい.遅発性ステント血栓症(LST)あるいはVLSTでは,1溶出薬剤の効果に伴う再内皮化の遅延や被覆されないストラット442, 443),2ステントの構成要素に対する局所の慢性炎症や過敏性反応などの異常血管反応444),3ステント留置時には適切に密着していたステントが慢性期に密着不良となる遅発性の不完全密着445), 4新生内膜の増殖とは異なる新規の動脈硬化性病変の進行(neoatherosclerosis) 446),5ステント破損やステントリコイルなどの物理的現象に伴う血流障害,などの病態が考えられる430, 447).過敏性反応に伴う血管反応に対応する所見として,血管造影上でステント周囲に造影剤が浸出するperi-stent contrast staining(PSS) 448)や,OCTでステントストラットの間に複数のくぼみを認めるmultiple interstrut hollows(MIH) 449),あるいは冠動脈外転(evagination) 450)が該当する.また,これらの病態を評価するにはIVUS, OCTあるいはOFDIが有用である451).第1世代のDESでは1年後以降に発症するVLSTの発症 率は経年的に低下することなく,同様の率で起こり続けるとされるが,きわめて長期の追跡結果は限られている. 10年間の観察から,5年前後で発症率は低下傾向を認めるとする報告があるが452),1年後以降10年間にわたりほぼ同じ発症率という報告もある453).なお,第2世代DESでは第1世代に比べ,VLSTの発症率はかなり低下している. 6.2.3 予防と予後 ステント留置後に投与する抗血小板薬とその投与期間は病態や留置ステントの種類によって異なるが,ステント血栓症の予防には良好なステント留置と適切な抗血小板療法が重要である. 抗血小板薬の中止には,医師の判断で中止する場合,手術などで中止する場合,合併症のために中止する場合,自己判断で中止する場合などがある.合併症や自己判断で中止した場合はステント血栓症などのイベント発生率が高くなるため454),このような中止は避けるべきである.ステント破損やPSSはステント血栓症と関連する冠動脈造影所見であり,第1世代のSESでこのような所見を認めた場合にはDAPTの継続が推奨される455). ステント血栓症に対する治療の予後をみると,その発症時期によって成績は異なる.早期のステント血栓症では治療後に再度ステント血栓症をきたす可能性が高く,また遠隔期の再血行再建率も高い.それに対してVLSTでは再発や再血行再建率が低いと報告されている456, 457). 表27 ステント血栓症の分類 発症時期による分類1. 早期ステント血栓症(early stent thrombosis: EST):ステント留置後1ヵ月以内2. 遅発性ステント血栓症(late stent thrombosis: LST):ステント留置後1ヵ月~1年3. 超遅発性ステント血栓症(very late stent thrombosis: VLST):ステント留置後1年以後確からしさによる分類1. 明らかな(definite)ステント血栓症1 血管造影所見による確認ステント留置部位とステントの近位部または遠位部5 mm以内の血栓像,かつ発症48時間以内の急性の心筋虚血を示す症状または所見(症状,心電図異常,心筋逸脱酵素の変化のいずれかで確認) 2 病理学的確認剖検または血栓除去術でのステント血栓症の確認2. おそらく(probable)ステント血栓症3 30日以内の説明できない死亡4 血管造影でステント血栓症が確認できていないステント留置血管領域の心筋梗塞3. もしかしたら(possible)ステント血栓症5 30日以降の説明できない死亡(Cutlip DE, et al. 2007 441) を参考に作表)