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p.41 抽出テキスト

4.3.2 僧帽弁閉鎖不全症

表24  CABG 予定症例の僧帽弁閉鎖不全症(MR)の治療

に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

重度二次性MR に対する僧帽弁手術の同時施行IIa B中等度二次性MR に対する僧帽弁手術の同時施行IIb C

重度の僧帽弁閉鎖不全症(MR)を伴う例に対するCABG時の僧帽弁手術の適応は,MRに関するガイドラインに準じる379–385).冠動脈疾患とMRに対する治療の併施の適応で問題になるのは虚血性MRである.虚血性MRの定義は, 1冠動脈疾患が原因の二次性閉鎖不全症,2リウマチ性心疾患のないこと,3変性性弁膜症がないこと,4先天性心疾患がないこととされる.基本的には,乳頭筋の側後方への変異により腱索が牽引されることによる機能性閉鎖不全症である386, 387).理論的には,虚血が改善されれば二次性である機能的(虚血性)MRは改善されるか消失するが,左室リモデリングが不可逆的である場合は僧帽弁への介入が必要になる.

CABG術後のMR改善の予測に関しては,術中の経食道心エコーでMRがたとえ中等度であっても,予後が不良になることがあったという報告や388),麻酔導入後の経食道心エコーはMRを過小評価する危険性があるといった報告がある389).このように,弁下部組織まで介入すべき虚血性MR例でCABG施行によりMRが改善されるか否かの予測は困難であり,術前の十分な検討が必要である.

中等度MRに対する治療方針に関しては,積極的に手術を行い良好な成績を収めたとの報告390, 391)もあるが,生存率に差がなかったとの報告も散見される392, 393).逆に,中等度MR例に対しCABGのみ行った場合も,術後早期にMRが一時的に改善されても多くの患者で再増悪するとの報告394–396)や,MR自体が術後生存における危険因子であったという報告もあるが397),一方でCABG単独でMRが改善されたとの報告もある398).このように賛否両論がある中で行われたCTSN試験でも決着はつかず,CABGに僧帽弁手術を加えても生存率,心イベント回避率,左室リモデリングに差は認められなかった399, 400).本邦においては近年,CABG単独であればオフポンプ手術(OPCAB)が多く行われ,僧帽弁介入への閾値が高くなっていることは否めない. 5 末梢動脈疾患合併例

5.1 頚動脈病変

5.1.1 合併率と脳梗塞発症の機序

冠動脈疾患に対するPCIおよびCABGにおいて,周術期に発症する脳梗塞は重大な合併症の一つである.PCI周術期の脳梗塞発症率が0.3~0.4%程度であるのに対し172, 401),日本冠動脈外科学会による全国アンケートの結果をみても,CABG周術期の脳梗塞発症率は1.1%程度と高いため402),CABG周術期の脳梗塞予防に関する議論は古くからなされてきた.このCABG周術期脳梗塞発症の危険因子として,心房細動,上行弓部大動脈の粥状硬化病変,低左室機能などに加えて頚動脈病変が指摘されている403).そしてCABGの術前に頚動脈病変のスクリーニングを行った場合,70%以上の高度狭窄の合併率は約5%と報告されている404).

頚動脈病変が原因となって脳梗塞を発症するメカニズムには,狭窄による直接的な脳血流量低下と,不安定プラークの破綻に起因する塞栓症があるが,大部分は後者と考えられている405–407).頚動脈の狭窄度は必ずしも病変(プラーク)の不安性と相関するわけではない408, 409).プラークの不安定性を評価する方法として,頚動脈エコーやMRIでのプラーク内出血や潰瘍形成などの所見が有用と報告されている410).しかし,一般的には「無症候性=安定」および「症候性=不安定」として治療方針を決定している.「無症候性」とは,過去に有症状の脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)の既往がないか,既往があっても6ヵ月前より以前の場合,一方「症候性」とは,6ヵ月前以降に有症状の脳梗塞・TIAの既往がある場合と定義される411, 412).