p.39 抽出テキスト
3.5 CABG 表20 CKD 合併例に対するCABG の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 多枝病変に対しては遠隔期予後改善の目的で,PCI ではなくCABG を選択する. IIa B周術期リスクの軽減の目的でオフポンプ冠動脈バイパス術(OPCAB)を行う. IIb B 3.5.1 術式選択 腎機能障害を有する症例に対してはオフポンプ冠動脈バイパス術(OPCAB)により手術成績が向上することが報告されてきた342–344).しかしながらCKD症例を対象とした多くの観察研究では,OPCABの優位性としては,術後ICU滞在時間や挿管時間,輸血量などに有意差を認めるのみであり,手術死亡や遠隔期死亡に有意差を認めた報告は少ない.また,中等度CKDの症例では,OPCABは術後の腎機能悪化や腎代替療法の回避にはつながらないとする報告345, 346)や,遠隔期の透析にも影響を及ぼさない347)といった懐疑的な報告が多い. 3.5.2 グラフト選択 CABG術後の遠隔期成績を語る上で,バイパスグラフトの開存率はきわめて重要である.ITAはその長期開存性から最も多用されるグラフトであり,CKD例や透析例においてもBITAの使用が予後を改善したとの報告がある348, 349).一方,CKD例ではITAの内皮機能が損傷されているとの報告もある350).また,特に透析患者においては術後の深部胸骨創感染(DSWI)の発生が懸念されるため,BITAの使用がためらわれることがあるが,CKD例や透析例においてBITA使用の有無により創治癒やDSWIの発生に有意差がなかったとする報告もある348, 351).胃大網動脈(GEA)については,CKD例では内臓動脈に動脈硬化性変化をきたしている症例が多く,また腹膜透析を要する症例も存在するため,使用が好ましくない場合が少なくない.また,血液透析時のブラッドアクセスとして重要な橈骨動脈(RA)は,一般にCKD例での使用は禁忌と考えてよい.透析患者においてはSVグラフトの劣化が速いことが知られており,動脈グラフトが好まれる傾向にあるものの,上記のごとく使用可能なバイパスグラフトに制限がある場合が多いので,個々の症例で使用するグラフトを十分に検討する必要がある. 4 弁疾患合併例 4.1 治療方針 弁膜症で手術適応のある患者に冠動脈病変がある場合と,冠動脈血行再建が必要な患者が弁膜症を合併している場合とでは,治療方針が若干異なる.まず,弁膜症の治療が主目的の場合の血行再建を考える.弁膜症が外科手術の適応で,リスクが許容範囲であればCABGを同時に行うことが一般的であるが,同時手術に関するエビデンスはきわめて少ない352).一方,冠動脈血行再建が主目的で,弁膜症単独では手術適応でない場合は,基本的に冠動脈血行再建の治療方針に従うべきと考えられる. 4.2 PCI 4.2.1 大動脈弁狭窄症 表21 大動脈弁狭窄症(AS)手術前のPCI に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 冠動脈病変についてのハートチームによる術前ディスカッションI C術前検査としての冠動脈造影(若年者,閉経前の女性を除く) I C経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の適応がある主要冠動脈高度狭窄病変に対するPCI IIb A大動脈弁狭窄症(AS)はリウマチ性,炎症性の場合を除けば高齢化に伴う動脈硬化性および変性性疾患であり,冠動脈疾患の合併率が高い353).特に高齢者の多い経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)施行例では,米国STS/ACC TVTの大規模TAVIレジストリーをみると,冠動脈疾患を合併していない症例は37%にすぎなかった354).本邦のTAVIのレジストリーでも冠動脈疾患は50%程度と報告されている355).冠動脈疾患を合併した重症ASに対する大動脈弁置換術(AVR)は,外科手術でもTAVIでも死亡リスクが高いことが示されている356–358).したがって,TAVIを含めて大動脈弁手術を行う患者に対する術前評価としての