p.36 抽出テキスト
低下した.DESとBMSをDM例で比較した試験としてSIRIUS試験がある263).DMの279例に対しDESとしてシロリムス溶出性ステント(SES)を使用し,BMSに比して治療8ヵ月後のTLRが有意に低率であった.第2世代,第3世代のDESが開発され,第1世代に比べてDM例においても治療成績の向上は得られているが,その程度は大きなものではなく,DM例におけるPCIの難しさを示しているともいえる264–266). とくに多枝病変をもつDM例において,CABGの優位性は多くの臨床試験で示されている144, 172).BARI試験では,多枝病変に対しCABG群のほうがバルーンPCI群に比べて5.4年の心関連死亡率が有意に低率であり(5.8%対20.6%) 267),この有効性は7年後,10年後も維持された131, 268, 269).また,FREEDOM試験では追跡期間5年時点の主要心血管イベント発生率は,PCI群で26.6%に対してCABG群で18.7%と有意に低率であった.両群間の差はPCI群で総死亡と心筋梗塞が多いことによるものであった172).2018年には多枝病変とLMT病変に対する11の比較試験のプール解析が発表された173).多枝病変例の5年生命予後は,非DM例ではCABG群とPCI群で差はないが,DM例ではCABG群のほうが有意に良好であった.さらに,左室機能不全のDM例ではPCI群よりCABG群のほうが予後良好であることも報告されている270). DM例における冠動脈血行再建の目的は,狭心症の改善に加えて心筋梗塞発症と冠動脈疾患死の予防(二次予防)がとくに重要であることや,DMを有する多枝病変患者はCABGの生命予後改善効果を享受する可能性が高い患者群であることを考慮しつつ,ハートチームで治療適応を検討することが望ましい. 2.3 CABG 表18 糖尿病(DM)合併例に対するCABG に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 多枝病変に対してはCABG を第一選択とする. I A術後の血糖値は180 mg/dL 未満を管理目標とする. I B skeletonized BITA(両側内胸動脈)グラフトを中心とした動脈グラフト再建を行う. IIa A ITA(内胸動脈)グラフトに対しskeletonized harvest を行う. IIa A 2.3.1 予後への影響 DM例のCABG後の予後は非DM例に比べて劣ることが知られている271–273).Herlitzらの報告では,CABG後2年間の調査で,非DM例では30日以内の死亡率は3%,30日から2年では3.6%であったのに対し,DM例ではそれぞれ6.7%,7.8%と2倍であった273).また,DM例は術後合併症の発症率が高く,特にインスリン治療は術後死亡,合併症の重要な危険因子である271, 272, 274–280). 2.3.2 オフポンプ手術の利点 オフポンプ冠動脈バイパス術(OPCAB)の恩恵は重症度が高いDM例ほど大きいことが予想される.実際,体外循環を使用することの悪影響は非DM例に比べて大きい281).DM例に対しOPCABとオンポンプ冠動脈バイパス術(ONCAB)を比較した研究がいくつかあり,OPCABが有利であるという報告282–284)では短期有害事象(死亡,感染,心イベント,脳梗塞,腎不全)の改善や術後入院期間短縮などのメリットが示されている285, 286).しかし,近年においても有益でないという報告も散見され287–289),結論はでていない.ただし,有益でないという結果は技術的問題に起因していることが多く,熟練度の高い施設からの報告は軒並みOPCABを推奨している. 2.3.3 糖尿病例に対するグラフト選択 DMがグラフト開存率にどのような影響を与えるかを検討した報告のほとんどで,動脈グラフトであれば遠隔期の開存率はDMの影響を受けないことが示されている290–294).一方,大伏在静脈(SV)グラフトはDM例では遠隔期開存率が低いという報告がある294). グラフト選択に関しては一般に両側内胸動脈(BITA)の良好な長期成績が示されており295, 296),それはDM例に対しても当てはまる297).近年における動脈グラフト採用の世界的な傾向に伴い多くの研究がなされ,BITAを中心とした複数の動脈グラフト使用がDM例の予後改善に大きく寄与していることがわかってきている281–286, 297–305).しかしDMではBITAを使用することによる縦隔炎の増加が懸念される306–309).この点に関してはskeletonized harvestを行えばBITAを使用しても縦隔炎は増加しないという報告が多くを占める281, 298–301).2015年のKajimotoら281)のメタ解析では,skeletonized harvestであれば縦隔炎発生率はBITAで1.4%,片側ITAで1.5%と全く違いがなかったと報告している.以上より,skeletonized BITA使用はDM例に対する重要なオプションである.しかし,肥満女性, COPDなどの危険因子が存在すると創部感染のリスクが増